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水の空の物語 第4章 第33話

 護りたいと、夏澄は続ける。

「俺、春ヶ原を護りたい」

 夏澄は力が抜けたように体を傾け、瞳を伏せた。
 瞳が潤んでいるように見えた。

 やっぱり、と風花は思った。やっぱり夏澄くんは優しい。

 こういうとき、一番悲しむのは夏澄くんだ。わたしもスーフィアさんも、悲しいと思っても涙は出ない。

 でも夏澄くんは泣くのだ。

 水の精霊は、本当に優しくできている。

「……」
 なにかいおうと思うが、言葉が見つからない。

 風花は夏澄の後ろに周り込んだ。よいしょと、両手を夏澄の背中に当てた。

「風花?」

「こ、こういうときはね、なにかに寄りかかると楽になるんだよ」

 ……だから、わたしが手で背中を支えるから、もたれてみて。

 そんな言葉を、なんとかうまく伝えたかった。

 いい言葉が見つからず、沈黙が続く。ものすごく気まずかった。

 頬が熱くなる。

「て、手で支えるから。寄りかかって、夏澄くん」

 夏澄は色のない瞳で、風花を見つめていた。

 少し風花の両手に体重をかけてくる。やがて、深くもたれて瞳を閉じた。



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