水の空の物語 第5章 第41話
「そろそろ日が暮れるわ……」
ふいに、スーフィアが風花を振り返った。
「風花はそろそろ帰らないと……。門限を決められているのよね?」
え? と風花は息を飲む。
「スーフィアさんたちは?」
「私たちは、優月が落ち着くまで、ここにいるわよ」
風花は優月を見つめた。彼の表情は少しも変わっていない。
「あの……。今日くらいだいじょうぶですよ?」
「でも……」
「ちょっと遅くなっても平気です。友達が大変だったっていえば、ババだって……」
「風花」
飛雨の低い声が飛ぶ。彼は風花をひと睨みした。
「優月のことは心配しないで。私たちがついてるから。……風花は明日の朝、早く霊泉に来て」
「そうですよね……」
風花はすんなりとそんな言葉を出せた。なんとなく、体に力が入らない。
住む世界が違う。
そんな考えが頭をよぎる。
もし、今一緒にいるのが、ひろあや香夜乃のような人の友達だったら、こんな淋しさは感じなかっただろう。
いつか……。
いつか、わたしでも当たり前のように、精霊さんたちの側に立ちたい。
夏澄くんたちと同じ世界で、生きていきたい。
風花は黙って手を振る。
向きを変えて歩き出した。
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