水の空の物語 第6章 第25話
風花は辺りを見まわす。
蜜柑の木の根元に夏澄を見つけた。ちらっと彼を盗み見る。
夏澄は優月と楽しげに話していた。
となりにでは草花が、ひよこのけん玉と竹とんぼに蜜柑をつつかせて遊んでいる。
うさぎの小毬が夏澄に擦り寄る。
すると草花も夏澄に寄りかかり、ひざに顎を乗せた。
「草花、いつの間にかあんな夏澄になついて」
スーフィアも夏澄に視線を移す。
声は聞こえないが、草花は夏澄にねだるように両手を合わせる。
夏澄は笑顔で草花の頭を撫でる。姿勢を正して瞳を閉じると、夏澄の体が水色に光り出した。
蜜柑の木に星水雨が降り注ぐ。夏澄の幻術だ。
草花は跳ね上がりながら拍手する。
「みんな、おいでよーっ!!」
大声で手を振ると動物たちが集まり始めた。うさぎに台湾りす、小型の鹿のキョンもいた。
草花に抱っこされて、星水雨を浴びる。
星水粒が蜜柑の葉にとまる。しろつめ草のほうにも舞っていき、草原を淡い光で照らした。
「……あのね、私、夏澄は草花と同じだと思うの」
草花を見つめながら、スーフィアがつぶやく。
「すぐに無理して自滅しかけるの。今度、夏澄がそんな風になったら、私たちと一緒に護ってね」
スーフィアはそっと微笑む。願いのこもった瞳をしていた。
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