水の空の物語 第1章 第22話
「ねえ、わたしも霊力を持てるようになるかな」
風花は思い切って言葉にした。
だが、小声過ぎたようだ。夏澄たちの反応はない。
「ねえ、わたしも……」
「どうしたの? 風花」
夏澄が青い瞳を向けてきた。
「……う、ううん。なんでもない」
「そう?」
「本当に、なんでも。……ねえ、夏澄くんはさっき、川の中に入ってなにをしていたの?」
風花はずっと気になっていたことを訊いてみた。
「あのとき、夏澄くん。霊力を使ってたみたいだけど」
「ああ、あれは……」
いう夏澄に、スーフィアと飛雨が慌てたように顔を見合わせた。夏澄を止めるように手で制する。
夏澄は首を振って、やんわりそれを押しもどした。
「あれは、水の記憶を探っていたんだよ。俺たちは、ずっと調べていることがあるんだ」
夏澄は波立たない水面のように、静かに言葉を紡ぐ。
「なにを?」
「俺の故郷の、水の精霊の国を元にもどす方法を」
夏澄の声には、なにかの想いがこもっていた。
「元に?」
うん、俺の故郷を。と、夏澄は愛おしそうにいった。
まぶしそうに瞳を細める。
「俺たちの故郷はね、本当に本当にきれいなところなんだ。泉や川は、青々として澄んでいて、そのほとりには草木や花があふれているんだ。神話に出てくる、楽園のようなところなんだよ」
……夏澄くんの故郷。
泉や花が目に浮かぶようだった。
水の精霊の国ならば、きっと川や泉は澄みきっているだろう。
汚れのない、美しい世界だ。
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