![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/108973762/rectangle_large_type_2_07f26375cd1f56e10619a9a4f9b03e75.jpeg?width=1200)
水の空の物語 第4章 第13話
夏澄と逢うのは一週間振りだった。
久しぶりに見る夏澄はまぶしくて、風花は目を細める。
「結界を張ったから、こっちに来て」
夏澄は手招きする。
周りに人がいないのを確認すると、風花は駆け寄った。
「久しぶりだね、風花」
土手に並んですわる。青い瞳がまぶしい。
風花は黙ってうなずいた。
「風花、見て」
少しの間のあと、夏澄は空を指差した。
「今日は巻層雲が出ているよ。風花と見たくて、春ヶ原から帰ってきたんだよ」
風花は、驚いて夏澄を見た。
本当にわざわざ?
ありがとう……っ。いいたいのに、やはり言葉が出ない。
風花はぎゅっとひざを握り、空を見上げた。
薄い、ベールのような雲が、空に幾筋もかかっていた。巻層雲だ。
「きれい……」
「風花も雲は好き?」
「うん。雲は水の塊だもんね。清らかで大好き」
「俺も好き。よかった、喜んでくれて。……風花、霊力の訓練がんばってくれてるんだってね。ありがとう」
「夏澄くんほどじゃないよ。春ヶ原はどうだった?」
「あれから、二回、桃色しろつめ草が萎れたことがあったんだって。原因はまだ分からないよ」
「……ねえ、夏澄くん。一緒に春ヶ原の無事をお願いする?」
「誰に?」
「じゃあ、巻層雲に」
夏澄はなぜか、とてもうれしそうにわらう。 風花と一緒に、空に向かって手を合わせた。