水の空の物語 第2章 第3話
「隠すことないじゃん。教えてよー」
ひろあはうれしそうに、風花の顔を覗き込む。二つに束ねてある、ひろあの髪が揺れた。
「え、と……。違うよ。なにもないよ」
「やめなよ、ひろあ」
興味なさそうに、やりとりを聞いていた香夜乃が口を開いた。
「風花はまだ話せないんだよ」
まだ、という言葉に風花は青ざめた。
「香夜乃まで、なにいってるの? 本当になにもないよ」「だって、朝からにこにこしっぱなしだったじゃない。誰が見たって分かるよ」
風花は言葉を失う。
ひろあが、あわてたように風花に向き直った。
「ごめん、風ちゃん、もう聞かないよ。あたしね、みんなでお祝いしたかっただけなの。だって、あたしと香夜ちゃんには入学早々いいことあったのに、風ちゃんだけまだだったでしょ」
高校に入学してすぐ、ひろあには彼氏ができた。香夜乃は、憧れの日舞を習い始めたのだ。
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