三十一文字に思いを込めて
挨拶
おはようございます。
リストを見たら、割と空いていたので書き始めた「ミイズミ」と申すものです。
クリスマスに向け、言葉遊びをテーマに語るということで、自分の強い分野である「和歌」に関する遊びについて書く次第です。
技法紹介
今回、大きく分けて2つ(小さく分けて3つ)の遊び(技法)について話そうと思っています。
そのうち1つが、「折句」と呼ばれるものです。
具体例として有名なものが
唐衣 きつつなれにし つましあらば
はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ
になります。
一見ただの短歌ですが、各句の頭をつなぐと「かきつばた」という花が現れるようになっています。
和歌以外で、「縦読み」「あいうえお作文」といった名称に代わって登場することもしばしばある技法です。
ただ、この記事を見るような言葉遊びに興味がある人たちなら、ただの折句では物足りないことでしょう。
そんな方々のために、パワーアップさせた「沓冠」を紹介していきます。
具体例は、
夜も涼し 寝覚めの仮庵 手枕も
真袖も秋に 隔てなき風
まずは、折句と同じように頭をつなげてみましょう。
すると「よねたまへ(米給へ)」つまりお米をください という文言を隠しています。
今度は、各句の最後を後ろから読んで見ましょう。「ぜにもほし(銭も欲し)」とお金も欲しい という要望を隠しています。
なかなか図々しいですね。
このように、句の頭の5文字だけでなく、お尻の5文字も使うのが沓冠です。
さて、実はこの首にはもう少しエピソードがあります。
この句を送られたのは、折句が好きな「頓阿」。
そんな彼は、兼好に返答として
夜も憂し ねたく我が夫こ はては来ず
なおざりにだに しばし訪ひませ
という歌を送ったそうです。
隠した言葉は「よねはなし/ぜにすこし」
どうやらお米は上げられないが、お金なら少しはあげられるとのこと。
洒落た返信ですね。
最後に紹介する技法は「隠し題」といわれるものです。
折句等も広義には隠し題に入ったりするようですが、今回は「もののな」と呼ばれるものを隠し題と呼びます。
これも具体例を交えて紹介します。
心から 花のしづくに そぼちつつ
憂く干ずとのみ 鳥のなくらむ
この首には、「憂く干ず」の部分に「うぐひす(鶯)」が隠れています。
というように、和歌の中に言葉を隠す技法を指します。
和歌ということもあり、濁点のつけ外し等がゆるい部分がありますが、自分のスタイルに合わせて柔軟に作っていきましょう。
1つのみだと比較的簡単ですが、隠す言葉の数を増やしたり、長い言葉を隠すとなると、これがなかなか作っていて楽しいものになっていきます。
トランプのマークや、三大○○といった、個数の決まっているものをすべて隠し、クイズにする。
誰かの誕生日など祝い事の時に、その人に関する言葉をいくつか隠す。
といった遊び方で、自分は楽しんできました。
作ってみよう
実際に自分が作るときの考え方をメモに残しながら、紹介した3つの技法を使って歌を作ってみようと思います。
「折句」
お題にしたい5文字を決めてしまえば、割と作りやすくお勧めです。
5音には、3~4文字+助詞
7音には、3~4文字を2つ
といったイメージで組むと作りやすい気がします。
例えば「おりくだよ」という5文字をクリスマスっぽい短歌に込めると
贈り物 リサーチばっちり クリスマス
大事に運ぶ よい子へ届け
のような作品が作れます。
「沓冠」
次にちょっとハードな沓冠作っていきましょう。
ちょうど10文字なので「アドベント カレンダー」でも読みましょうか。
…… 「ン」か「ー」が文頭に来るの嫌ですね。
「ン」は「ム」、「ー」は母音にする といった対策もありですが、ちょっと自由に作ってみましょう。
偶数文字目にこれら文字が来ているので、不格好にはなりますが
ア___ド
ベ_____ン
ト___カ
レ_____ン
ダ_____ー
こんな感じで組んでみます。
作るコツとしては、自由度の少ない5文字部分や、使いにくい文字(今回でいうと「べ」)を優先に決めるとよいでしょう。
ああ、あい、あう…… 開けた窓 とかよさそう
クリスマスっぽいしベル? 窓と相性よさそうなベランダ?
といった風に断片を作っていきます。
そうして出来上がったのが、
開けた窓 ベルの快音 届くのか
零度の気温 暖にはコーヒー
クリスマスに近づけきれませんでしたが、そこそこ冬っぽい歌になりました。
「隠し題」
最後に隠し題を作ってみます。
「ぴーころん」「ゆうぎ」「ことば」 あたりを入れようと考えてみます。
難易度の高そうな「ぴーころん」。
分かりやすい言葉の区切り目は残さないように作りたいですが、そうすると
「ぴーこ/ろん」で区切ることになり、厳しすぎるので「ぴー/ころん」に分けて考えます。
ぴー で終わる言葉を考えていき、「ハッピー」を
ころん で始まる言葉を考えていき、「転んだ」を 使っていきます。
ハッピーが4音なので、5音の句には組み込みにくいことなどから、
_____
____ハッピー
転んでも
_______
_______
といった場所に入れるのがよさそうです。5音には「転んだ」を転んでも、転んだら といったように活用することで合わせます。
うぎ で始まる言葉がなさそうなので、「ゆう/ぎ」
とばで始まる言葉はありそうなので、「こ/とば」 と分けようかな~と考えます。
言葉遊びの楽しさを短歌に組み込めたらうれしいので、「自由」
「技術」「技法」といった言葉の相性もよさそう。
_____
____ハッピー
転んでも
_____自由
技法凝らして
~こ/とば~ を入れ込む自由度がありそうでないと感じたので、配置換えをしてみます。
皆自由
技法____
_____
____ハッピー
転んでもなお
2句目の最後に「こ」、3句目頭に「とば」を入れるようにして
皆自由
技術の宝庫
トばしてけ
作ればハッピー
転んでもなお
という短歌を作ることができました。
最後に
文章を書くことに慣れておらず、つたないものになってしましました。
高校の課題として作ってから、思った以上にハマってしまったこれらの技法ですが、少しでも楽しみが伝わっていると幸いです。