XR業界で働きたいあなたへ
最近続編を書いたので、よかったらそちらも併せてご覧ください。
XR業界で働きたいあなたへ -2-
https://note.com/mizkun/n/n7726078a58b2
いまはXR関連の仕事についていないけれど、いつかはXRを生業にしたい。そんなことを考えたことはありませんか?
初めまして、みずくん(@mizkun)と申します。初noteです。どうも。
株式会社Psychic VR LabというXR(VR/AR/MR)の会社で、採用を担当しています。
本業はプロダクトマネージャーで人事ではないのですが、なんだかんだ入社から1年半に渡って50人以上を面談したり、リアル&バーチャルの採用イベントで登壇したりと、採用担当っぽいことをしてきました。ちなみに一昨年に今の会社に来る前はGoogleという会社でスマホアプリ関連の仕事していたので、いわゆるXR転職経験者でもあります。
ありがたいことに、近年のXR業界の盛り上がりに比例して「XR業界で働きたい!」という方が増えているように感じます。「XR業界で働きたいのですがどうすればよいですか?」みたいな相談を受けることも増えました。
そこで、これまでの経験を元に「XR業界で働きたい人」向けの記事を書いてみようと思います。
マッチングの3要素 - スキル、カルチャー、ビジョン
採用時にチェックするポイントとして、私はいつも「スキル」「カルチャー」「ビジョン」の3要素を挙げています。
「そのポジションに貢献するだけの力があるか(スキル)」「その環境で力を発揮できるか(カルチャー)」「力を発揮したい方向が会社と合っているか(ビジョン)」の3つが揃っていることが、あるポジションで十分に活躍する条件だからです。
いずれも「会社側の想定といかにマッチするか」という相性の問題なので、一概に良し悪しといったものが言えるものではありません。なので「これをすればどこにでもう受かるよ」みたいなことはありません。ただ、実際面談をしていると「いろんな準備が足りてなくてそもそも相性が測れないなぁ」というケースが非常に多くあります。
そこで、本エントリーでは「こういう準備をしておくと、ちゃんと企業に自分のことを伝えられるし、自分でも相性をチェックできるよ」ということ(など)をお伝えしたいと思います。
ちなみにいきなり余談ですが、私が就活時に大変お世話になったロジカル面接術という本がありまして、この本に書いてある「私には能力があります」というのが「スキル」の話で、「私は御社にあっています」というのが「カルチャー」「ビジョン」の話です。就活でも転職でもこの本だけ読んでればどうにかなるレベルの名著なので未読の方はぜひ。
スキル - 良いポートフォリオを作ろう
1時間やそこらの面接で人のスキルを測るのはかなり難しいです。
いや、実は「明らかにすごい人」と「明らかにスキルが足りてない人」は一瞬でわかるのですが、大体の人はやっぱり「スキルあるかよくわからん」という感じになります。
企業側がスキルを判断する上で一番参考にするのは、やはり経験です。特にエンジニアやアーティストの場合「これを作ったことがあります」というのは、とてもわかりやすい判断材料です。いわゆるポートフォリオが大事という話です。何かを作る仕事の方は、必ず用意しましょう。
(2021年6月追記:「何かを作る仕事の方は」と書いていますが、実際には別にクリエイター職じゃなくてもポートフォリオ(つまり職務経歴)がスキルを見る上では最重要になります。営業でもマーケでも)
さて、ポートフォリオは「スキルの裏付け」なので、そこには明確なメッセージが必要です。「こういったものを作れるということは、つまり私は◯◯ができます」といったことです。このポートフォリオから伝わってくる「◯◯できます」という部分が企業側が求めているスキルとマッチしていると、うちで働いてほしい!となるわけです。
自分のポートフォリオからどんなスキルセットがアピールできるのか、を考えてみましょう。
エンジニアの場合、ポートフォリオからアピールできることは単に「コーディング力」だけではありません。例えばバージョン管理を行ったのか、チーム開発したのか、テストは書いたのか、外注をした部分があるのか、そしてこれらをどんな方法で行ったのか。こういうのは成果物だけではわからないのですが、立派なスキル、経験です。また、作ったものを広めるために何をしたのか、ユーザーのフィードバックを元に修正したことはあるか。こういったことも伝えられると良いと思います。
ポートフォリオは作るだけじゃなくて背景にあるスキル・経験を伝えるところまでがセットであることを忘れないようにしましょう。
ところで、どんなポートフォリオが魅力的なポートフォリオなんでしょうか。
これは一概には言えないのですが、例えばポートフォリオの作品数が多いのに、実験的な細々としたものばかりで判断に困るということがよくあります。
なぜなら、入社後に開発するのは「実験的な細々としたもの」ではなく、「サービスとして開発・運用していく大規模なもの」だからです。そのため「実験的な小規模開発」のポートフォリオからでは、あまりスキルの判別ができないということになります。いわゆる「業務での経験」が重宝されるのは、それが「企業で必要とされるスキルを示す経験」である可能性が高いからです。
ポートフォリオから示せるスキルが、応募しているポジションで求められているスキルかどうかを考えてみましょう。もしそこがずれていると、せっかく作ったポートフォリオもいまいち活躍せずに終わってしまいます。これは逆に言えば、自分のポートフォリオから示せるスキル(=自分が持っているスキル)にあった職種に応募しましょう、ということにもなります。
ちなみに、XR界隈は新しい物好きな人が多いためか、ポートフォリオが細々とした実験的なものである人が多い印象があります。ですが、私としてはぜひ「ひとつテーマを決めてがっつり時間をかけて開発してみる」というのをおすすめしたいです。
また、VR界隈だと多いVRChatでの活動をポートフォリオにすることについて、「VRChat向けの開発というのは一般的なUnityの開発と結構違う特殊スキルなので、それだけでUnityのスキルはいまいち分からない」という点に注意してください。
もちろんシェーダーに特化してシェーダーのスキルをアピールしたい場合や、VRChatでサービスを展開している企業にアピールしたい場合は別です。しかし、そもそも面接官がVRChatリテラシーがないケースもあるため、VRChatベースのポートフォリオでスキルを測るのは非常に難しいです。もしポートフォリオが主にVRChatでの活動の場合、「ポートフォリオからアピールできるスキル」を伝える努力がさらに必要になることを意識しましょう。
カルチャー - XR業界に向いている人
思ったより企業には「カラー」というものがあって、「あー、たしかにあの人〇〇の人っぽいねー」みたいなことを思うことはよくあります。これがいわゆるカルチャーからくるもので、企業を支える大切な要素となっています。私が前に勤めていたGoogleでは、「Google社員らしさ」ということを「Googley(グーグリー)」と呼んでいて、社員が持つべき要素としてかなり重視していました。
会社のカラーはもちろん会社によって違うのですが、XR業界の人っぽいよね、みたいな共通点はあるかと思うので、それを紹介したいと思います。いろいろあると思いますが、パッと思いついたところは「ポジティブな人」「何でもやるひと」「意思が強い人」「行動力がある人」。
ポジティブな人 - ポジティブさは超大事です。XRは黎明期ですから、懸念点をあげようと思えば無限にあげられます。そこで心が折れちゃうとつらいです。「VRは幻滅期」とか言われても自分の考えを信じてXRにつっこんじゃうポジティブさがほしいです。
別に批判をしてはいけない、とか心配しちゃいけない、とかではないですが「不安にばかりにとらわれて行動できない」ではこの先行きの分からない業界では何もできません。むしろ、殆どの人が未だにXRの可能性を信じきれてないなか、XRのすごさに気がつけた時点で超すごい、というのを自覚しましょう。
なんでもやる人 - 特にスタートアップの場合、「事前に決まった仕事しかしません!」という人はあまり向いてないです。変化の早い業界のなかで、限られたリソースでものごとを遂行していくためには、一人ひとりにいろんなことが要求されます。エンジニアでもコーディング以外の仕事をするときもあります。そういうのを楽しめるかどうかは大きなポイントです。
意思が強い人 - 自分のやりたいことがはっきりしてないと、病みます。明日どうなるか分からない業界で、知り合いから「VRって本当に流行るの〜?めっちゃ酔うじゃんあれ、あと高いし。」とかしょっちゅう言われるわけです。自分の考えをどれだけ信じられるかは非常に大事。また、その中でもXRで何がしたいのかについての考えをしっかり持っているのは大事です。これについては後述します。
行動力がある人 - XR界隈は驚くほど行動力ある人だらけです。自分が「やりたいと思っている」間に「やっている」人が何百人もいる業界です。もしあなたが「VRゲームを作りたいと思って」いて、時間もあったのに、実際に作っていなかったら、ちょっと向いていないかもしれません。まぁでも安心してください、XR転職しようとしている時点であなたにはかなりの行動力ありますから。
こうやって書いてみると、XR業界で生きていくのは結構大変に見えますね笑。採用のときは、こういう同僚がいる人が面接をするわけなので、大抵のことでは引きません。ガンガン行きましょう。
会社によって、これらの要素(または他の要素)のどこを重視するのかは異なります。ホームページに書いてあったりすることもあるので、是非チェックしましょう。分からなければ面接で聞くべきです。また不安があれば、できるだけ多くの社員に会わせてもらいましょう。ポイントは「一緒に働いてストレスを感じなそうか」です。自分の特性を捻じ曲げないと働けない環境というのは辛いものですから、しっかり腹落ちするまで検討しましょう。
ビジョン - XRでなにがしたい?
実は採用でいちばん大事なのはこれだと思っています。ビジョンマッチ。仕事でやっていることと自分のやりたいことがあっていれば大抵のことは楽しく、あっていなければどんなに素晴らしい環境の会社でも辛いものです。
たいていの会社は自社ホームページに「ミッション」とか「ビジョン」とか書いてあると思うのですが、あれ実はどの会社も大真面目にリソースをかけて作っています。
ですので、面談するときは最低限そこはチェックして、自分と合いそうか考えてみましょう。共感できなければ受けないほうが良いし、共感できるところがあれば面接で率直に伝えましょう。これやってない人地味に多いのですが、最低限の準備です。
さてその上で、XR業界という意味で大事なのが「XRで何がしたいの?」です。
みんな(私も)気軽に「XRが好き!」って言いますが、XRって実は非常に大きな概念です。言ってしまえば「インターネット」とか「動画」とかそういう単語と同じくらいの一般的な用語です。ですから「XRのどこがどうして好きで何がしたいのか」というのは人によってかなり違うはずです。
「XRが好きでXRならなんでもいい」みたいな人たまにいますが(かつて転職活動中の私も一時期そんなテンションでした)、これはデートで「女なら(男なら)なんでもいいんで付き合ってください」っていうくらい意味分かんないです。
そこで、まず自分が「XRのどこがどうして好きで何がしたいのか」をきちんと考えましょう。もちろん正解は無いのですが、自分の中で答えをだしておくことが大事です。実際に面接でこの質問をすると考え込む人とても多いのですが、これが聞けて初めて「うちの会社のやっていることにあっているね」とか「あってないね」みたいな話になるのです。
ちなみにXR業界の人は引くほどXRについて考えている人が多いので、ここで自分の意見を持ってないと一瞬で冷めます。注意。
これを考えるときのヒントとして3つ。
1つ目は私の好きなやり方ですが、他の既存のものと比較して考えるのをおすすめします。例えば「VRゲームが好き」な人なら、「PS4の同ジャンルの非VRゲームと比較してなぜVRゲームが好きなのか」とか考えてみましょう。それで、「没入感があるから」とかいう答えになったとします。ではその「没入感」とはなんなのか更に考えてみると、「頭を動かして見たい方向が見れる」「体を動かして弾が避けれる」とかそういう話になります。
つまりあなたにとっては「コンテンツ体験にリアルな身体感覚を持ち込めるようになったこと」がVRにおける重要な点なのです。では「身体感覚を持ち込める」ことの本質的な価値は何なのか考えてみましょう。そしてその価値を発揮するのはどういうサービスでしょうか?そうやっていくと、徐々に「XRのどこがどう好きで何がしたいのか」が見えてきます。
2つ目は、すでにポートフォリオがある人は、そこから自分のやりたいことが見えてきたりします。「やりたいことはすでにやっていること」であるケースが多いからです。ポートフォリオについてはすでに触れたとおり。
3つ目は、「ユーザーの立場」から視点を上げることです。現在XR企業で働いていない人は、XRとの主な関わり方が「ユーザー」であることが多いと思います。その場合、「ユーザーとしてXRでなにがしたいか」という考えに終始してしまうことがあるのですが、そこを少し視野を広げて、例えば「XRを使って社会のどんな問題を解決したいのか」とか「XRを使ってどんな新しい表現をしたいのか」といった、サービス提供者、クリエイターなど様々な視点でものごとを考えて見るようにすると、新しい発見があるかと思います。
カルチャーのところで、「自分の意思が強い人」と書きましたが、この「やりたいこと」が明確で会社のビジョンや事業と合っていないと、仮に入社できてもつらいです。ここは最重要と言っても過言ではないので、入社前にしっかり考えて、しつこいくらい企業の人と議論して納得して進めましょう。
最後に
色々と偉そうに語ってきましたが、採用は本当に相性とタイミングなので、お祈りされてもめげずにいきましょう。就職・転職活動中はいろんな会社に気軽に話を聞きに行けるチャンスなので、ぜひ楽しんでください。私も、転職活動中に知り合った人と交流が続いていたりして、正直もっと色んな会社回っておけばよかったなと後悔しています笑
私自身XR業界に入りたくて転職を経験した身として、この記事がXR業界を目指す人の夢を叶える手助けに少しでもなれば嬉しいです。この記事の内容やそれ以外でも、意見や相談事がある人は気軽に連絡してください。
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