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銀座和光のディスプレイを勝手に妄想してみる

教授が指定した店のウィンドウディスプレイを考えて模型を作り、プレゼンするという課題。材料は基本100均。
とんでも不器用な私なのだが、先生に個人的に称賛のメールをいただいくらいには、先生のツボにはまったらしい。きっと、先生がライティングの先生だったからだと思うが。

1.テーマ


今回、1月の銀座和光のウィンドウディスプレイを作成するにあたり、たくさんの銀座らしさについて考えてみた。

【案として出たキーワード】
中国春節・働きはじめで2020年を引きずる・小正月・歌舞伎座・大人の夜の街・明治の繁華街・福沢諭吉没後120周年・GUCCI(TPOを考えないファッションブランド)100周年・外国人が多い・ビジネスマンに人気の確実なブランド・陶芸の展示・見分けはつかないが恐らくすごいのだろうと思わせる力

この中で私が注目したのは、「明治の繁華街」というところだ。銀座は明治時代から日本のおしゃれの最先端として輝いてきた町である。そのまま明治時代のような和洋折衷を兼ね備えたディスプレイという案も出たが、それでは今までの絢爛豪華なディスプレイと同じく、1月の空白を埋めるにはパンチが弱いと感じた。そこで、更にその先を考えてみることにした。
いくら明治に輝いたといっても、これが崩れた時というのがある。それが「東京(銀座)大空襲」である。あれだけ華やかで先端を走っていたものは一瞬にして炎に焼き尽くされ、全て瓦礫となった。暗い日本の姿である。けれど、和光だけはその空襲を生き延び、シンボルとして時計塔を崩すことはなかった。そこから再び銀座は立ち上がり、かつての華やかさを現在も取り戻している。私はこの異形たる「変化」に目を止めた。
これは私の感覚であるが、キーワードとしてあげた「働き始めで2020年を引きずる」のように、1月中は2021年に慣れない。年が変わったという変化を、ビジネスの街にも伝えなければならない。そうして、銀座大空襲からの変化、年の変化、二つに共通して「変化」に決定した。

2.模型

暗正面

↑正面から見た模型
暗い背景に、瓦礫が積み重なり、立っていたはずの電柱も傾いている。真っ赤なライトが、空襲の炎を現している。ウィンドウにもひびが入っている。
↓左右から見た模型

暗左から

暗右から

左右からみてもわかる通り、まるで銀座とは思えないような姿である。
華やかであるはずの銀座のディスプレイとは打って変わって、暗く、豪華さなど一つもない。色は黒と白のモノトーンと危険を現す赤を使い、銀座空襲の写真のような、みすぼらしさと恐怖を演出する。
●ライト
模型では全灯しているが、赤いライトは、一つずつ順番に点灯していき、写真のように最終的に全灯する。順番につくことで、空襲による爆撃、その後の火災を表現している
●ヒビ
これも模型では既にヒビが入っているが、プロジェクションマッピングを利用して、だんだんと窓ガラスが割れていっているように現す。窓ガラスに写らなければ、後ろの暗幕に写す。傷ひとつないはずの窓ガラスに盛大なヒビが入っているように見せることで、人々は驚き、足を止めることだろう。
また、できることであれば、ウィンドウ内に少しのスモークを炊くことで、中に煙が充満しているかのように思わせる。(写真A)
●瓦礫
これは暗幕にもともと付随している。だんだんと明るくなることで、その存在が見えてくる。
●電柱
これも暗幕に付随している。だんだんと明るくなることで、不穏にも倒れる姿が浮かび上がる。

暗正面アップ

写真A↑

明正面

↑幕が左右に開いた後の正面から見た模型
暗幕の奥には、店の内装と鏡が見える。バックや時計といったブランド品と、象徴である和光のミニチュアが立っており、赤いライトが危険から絢爛さを現す色に変わる。
↓幕が左右に開いた後の左右から見た模型

明右から

明左から

左右からみてもわかる通り、暗幕が左右に分かれて開くと、ヒビは消え去り、豪華絢爛な銀座和光の姿が現れる。先程変わり、モノトーンではなくなり、空襲を乗り越え、町の顔として立ち続ける和光が姿を現す。
●ライト
先程は空襲を現すかのような危険な色として赤を使っていたが、大人で、豪華絢爛さを現す鮮やかな赤色へと役目を変える。上からは白い光が差し込み、めでたい紅白の色にもなっている。
●暗幕
時間が来ると、暗幕が左右に開いていく。するとセンターの分かれ目から、この空襲を生き抜いた和光の姿が現れる。そうしてどんどん視界が広がり、バックや時計といった、和光で販売しているブランドの品々が顔を現す。この品は、日替わりで変えてもよい。
完全に左右に分かれた暗幕は、今度は華やかなステージの袖幕のように中を飾り立てる。幕が開くというというのは、シアターも連想させ、ディスプレイの中が一つの作品だという暗示もある。また、新時代の幕開けという意味にもかかっている。
●瓦礫
前方に散らばった瓦礫も、きちんと光が当たることで、日本風の石垣のように思えてこないだろうか。
●鏡
一番注目してほしいのは、和光を挟んで立つ大きな鏡である。
模型ではわかりにくいが、このディスプレイの背面は、店内が透けて見えるシースルーになっている。その間に立つ鏡は、このディスプレイを見ている人、銀座の街を歩く人々、大きな交差点の銀座の街の姿を映し出す。つまり、和光の店内、銀座の街が、このディスプレイの中で共存し、合わせて銀座というものを閉じ込めて表現している。人々や町は常に入れ替わるため、このディスプレイの背面に写る銀座の街は常に違う顔を見せてくれる。

また、夜になると、照明がより一層見やすくなり、この2つの世界の変化がより一層大きくなる。

暗正面夜

↑夜ver.の正面から見た模型
闇は更に深くなり、燃え盛る銀座空襲の様子が更におどろおどろしく映し出される。僅かな白い光が、この空襲の希望かもしれない。

明正面夜

↑夜ver.の幕が左右に開いた後の正面から見た模型
空襲が終わって視界が開けると、暖かな光に包まれて、和光が姿を現す。シックで大人な夜の時間を知らせるかのように映しだされる。

3.まとめ

このウィンドウディスプレイを見た人が、販売促進が増進されるかといわれると定かではないが、少なくとも空襲が始まり、幕が開き、銀座の中と外が共存するまでの3分間、足を止める人が増えるのは確実である。足を止めているうちに、見えてくるかつての銀座の姿、今の銀座の姿、それに興味を持ち、外から見える和光の店内に興味を惹かれて中に入ってくるのではないかと踏んでいる。
変わっていく風景に、年が変わっていることも気づいてもらえればいいと思う。
当初は、幾何学的で、何が素晴らしいのかわからないようなネオンの世界を作り出そうとしたが、今までの和光のディスプレイにもそれは存在しているため、それでは弱いと感じた。そのため、今までの和光になかった、みすぼらしく、恐怖さえ感じるような全く新しいディスプレイを作ろうと考えた。しかし、それだけでは銀座らしさに欠けてしまう。いくら人々が興味を持っても、銀座和光らしさという姿を失ってしまっては意味がない。そこで、初手で興味を引き、3分間変わりゆく世界に目を止めているうちに、和光らしさというものを見つめているという今回のディスプレイ作成に至った。大きな傷跡を抱えていた銀座が現在のように強く輝く町になるという変化を、遠くの交差点で待つ人にもわかりやすく掲示したため、多くの人に楽しんでもらいたい。

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