Cordaeアルバム、『The Crossroads』レビュー──父となった表現者
メリーランド州スートランドが生んだ27歳のCordaeが3rdアルバム『The Crossroads』を完成させた。
2年以上の制作期間を経て生まれたこの作品には、アーティストとしての深化と、一児の父となった人生の変容が鮮やかに映し出されている。
その音楽的出発点は、デジタルネイティブ世代ならではの軌跡を描く。GTAのオンラインロビーでの邂逅から始まったYBNでの活動。
J. Coleの「1985」へのアンサーとして放った「Old N****s」はあのDr. Dreをも唸らせ、Atlantic Recordsとの契約へと道を開いた。
2019年のXXL Freshman Class選出、そしてデビュー作『The Lost Boy』での才能の開花──ヒップホップの新しい成功物語を体現していた。
2022年の『From a Bird's Eye View』は転機となる。
本人も「キャリアで最も弱い」と認めたこの作品を経て、Cordaeは約3年の停滞期に入る。しかし、これがむしろ糧となった。
より深い内省と音楽的探求を重ねた末に生まれた『The Crossroads』は、円熟味を帯びた傑作として結実している。
本作には、Lil Wayne、Anderson .Paak、Kanye Westら錚々たる顔ぶれが参加し、J. Coleもプロデュースで貢献。世代を超えた才能の結集が、アルバム全体に説得力を与えている。
そこには、Cordaeがこれまで培ってきた技術と経験、人生における新たな視座が余すところなく投影されている。
父となり、アーティストとしても転換期を迎えた彼は、この重要な時期に驚くべき深度と広がりを持つ世界を描き出した。
サウンド─伝統とモダンの融合
全17曲48分にわたる本作は、Kanye Westが確立した「チップマンク・ソウル」とオールドスクールなヒップホップサウンドを基調としながら、それらを現代的な解釈で再構築している。
高音域にピッチシフトされたソウルサンプルと伝統的なビートメイクの手法が、最新のトラップサウンドと出会うことで、独自の音響世界を生み出している。
オープニングの「'06 Dreamin'」は、アルバム全体の方向性を象徴する一曲だ。この曲では、かつて歌手を目指しながらプロとしての成功を収められなかった母親の楽曲をサンプリングし、彼女の夢を自身の音楽を通じて叶えた。
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