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日記 NHK(にんげん はっきょう かんさつにっき)にようこそ。あなたはずっとここに引きこもってる。

今日は体調が悪いので怪しい文章しか書けない。

他者とのコミュニケーションは難しい。人間と人間の会話のやり取りは人間が思っている以上に本能と抽象的な感覚に依存している。あるいはそれに依存しない会話を脳内で考えていたとしても、言語という形で出力した瞬間チープでありきたりな考えに加工されてしまうのかもしれない。

言葉というツールを使って、他者に向かって2進数の「1001」と入力したはずなのに、相手の体調や気分、その直前の言葉との関わりの妄想、身振り手振りの動きや表情によってそれが10進数の「千と一」として伝わってしまうような気持ち。

そういう、本当に伝えたい気持ちがどうでもよいノイズによって剥がされてしまったり、逆に自分が相手からの発信をまっすぐ受け取れないのが辛い。そういうものなのだ、と熱湯をそのまま飲み込むことができればどれほどよかっただろうか。世界って難しい。脳というデバイスをもつ生成AIであることをやめ、純粋に他者に入力されたままの機械語を話し、それを他者にそのまま伝えられるコンピューターになりたい。人間以外の動物にも知性はあるが、自分自身の獣性や本能に気づかない動物は人間くらいだろう。欲のまま喰らってはならない、というルールを自分で定めてしまったがゆえに、どこからが欲で、どこまでが知性なのか明確にラインを引けていない人間のなんと多いことか。

なんか最近は推し活とか流行ってるし、久々に会った親戚もゲーム実況者や配信者、コスプレイヤーなどに熱を上げている。グッズを買い揃えたり、バッグにグッズを飾りつけたり、祭壇を作ったりしている。しかしなんというか、私はそういう世間が「推し」と区分するものをあまり好きではないのだ。より正確に言うと、生身の人間という存在を「心から自分が信じるもの」の台の上に置きたくない気持ちがある。生身の人間って不安定なエネルギーの塊みたいなものだし。やっぱり人間も獣だから、お腹は空くし、汚れるし、裸にもなるし、トイレにも行くし、いつか老いるものだし、何かあれば喉も潰れるし、顔も大怪我するし、スマホを触ることができなくなるかもしれない。そう思うと、その「信じるものステージ」には自分にとって身近で、なおかつ抽象的であったり、形而上の存在を置いておきたい。

たとえば、美味しい食べ物を求め訪ね歩くときの気持ち。現代の知識でも解明されていない古代の地球の秘密。ぬいぐるみの自我。好きな夏休みの思い出。頭の中のジャンプで連載しているオリジナル漫画の最終回と、頭の中で発売されている、その漫画の設定集。良い明晰夢で出会った物語。まだメディアミックスされていない小説を読んだ時、自分が想像した物語の世界や、自分が想像した登場人物の声や外見。

そういった、私の頭の中にある良いものを寄せ集め、それを信じて生きていたいと思っている。が、それはそれとして、この考えはかなり危ういとも思う。現実のものや生身の人間の存在が、この信ずるものの中に含まれていないからだ。

いつか、自分だけが信じる、自分が発明した神のために私はオリジナルの祈りを捧げ、誰かの真似も許さず、個人で誰も知らないヤバい思想にハマったまま死んでしまうのかもしれない。根っこが人間不信だから、他者に心を開いて助けを求めることもできない。人間は大人になったら「実は独りよがりでそう考えるのやめて、誰かに甘えて生きるのも悪くはないかなって……」とも言えなくなるのだ。甘えることができたり叱ってくれる相手はいないから。

推し活という宗教ビジネスを推し進めた先にある世界とは、人間ひとりひとりが神になり、自分だけの箱庭を作り、誰とも関わりを持たないまま、ひっそりと人間が地球から消えていく世界なのかもしれない。

自分の心だけに話しかけてくれる神様のために人は生きていき、言われるがままに良い行いをし、やがてその愛を証明するため、その世界の秘密が他者にバレないよう自殺する。そして一人一人と人類は死んでいき、文明が滅ぶ。そういう話をどこかで見たことある気がする。だれかそういうお話を教えてください。読むから。

私はネガティブな内容の小説を書く時、勝手に想像した独りよがりな感情のしわざで罰を受け、その精算のために自殺するという構造をよく書いている。これしか書けないので。でも最近はその罰がマイルドになったり、罪を清算しきった先の未来を書こうとあれこれ悩んだり想像したりもしている。

頭の中の狂った陽の輝きだけを信じて、やがて朽ちていく私のことを、見ていてください。これを見ている君にもまた、狂気の光が灯ることを信じている。

読んでくれてありがとう。良いしゅうまつをお過ごしください。

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