【 文学トリマー 】#毎週ショートショートnote
今日も出版社にプロットを持って行ったが、コテンパンに打ちのめされた。部屋でゴロゴロとしていると、女性が訪ねてきた。
「草刈先生ですか? 私、草原出版社で編集をしております草原(クサハラ)と申します。いきなりですが、ベストセラー作家になりませんか?」
草原さんは説明の後、僕の手に小さな本と小さなトリマーを載せた。
その本を開くと次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。
その草原には長い鉛筆が生え、文字の花が咲いていた。
右手に持っていたトリマーがムクムクと大きくなり、ブルブルとエンジンがかかった。
僕は、その花を手当たり次第に刈りまくった。
その刈った花は、すぐに本の中に吸い込まれていった。
本は、どんどん厚みを増していった。
本の中から飛び出してきた栞を掴むと、部屋に戻った。
傍らには、400ページ程の本が転がっていた。
すぐに草原さんが回収して行った。
瞬く間に僕は、本の内容も知らないままベストセラー作家になっていた。
20冊目の本を作ろうと草原に行ってみると、ぽっかりと穴が空いていた。
僕はその穴に誘われるように、横たわってみた。
少しずつ眠くなり、僕はこのまま死ぬんだなと思った。
暫く経つと、穴の縁に草原さんが現われた。
「先生、今までありがとうございました。次の新人作家の肥やしになって下さい」
(文字数:538文字)(使用しておりますイラストは、Copilot AIが作製したものです)