【 記憶冷凍 】#毎週ショートショートnote
「ねぇ、この間、私、一度死んで生き返ってきたじゃない。実はその時、チビ(犬)に会ってね。不思議な事が出来るようになっていたんだよね」
「それって、一度死ぬと不思議な力がついてくる、みたいな」
「そうそう、そんな感じ」
「で、どんな事があったの?」
「気が付いたら、大河が滝になって下へ流れ落ちている地の果てみたいな所に立っていたのね。
そうしたら、下から昔、家にいたチビが雲に乗って上がってきたの。
チビは神の眷族で、神に頼まれ現世にいたと言うのね」
「懐かしい。それで、どうしたの?」
「育ててくれた恩があるから、今回は現世に戻り手伝いをしてほしいと言われたの」
「そんな感じがしたよ。で、どんな手伝い?」
「今、やってみせるね」
私は指先を妹の頭の上で、3回クルクルっと回した。
「何、それ? お姉、その指先の上で回っている球体は何?」
「記憶している願い事らしいの。すぐに溶け出し、また頭の中に戻るから、この容器に入れて瞬間冷凍」
「え、どういう事?」
「う~ん、私にもよく分からないけど。チビは忙しいから、小さな願い事を無視していたのね。そうしたら、神に怒られたらしいの。小さくても願い事は願い事。その者にとっては、大きな願い事だと」
「へぇ~、神様って凄い、と言うか、本当にいるんだね」
と、妹は嬉しそうにしていた。
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