【 お返し断捨離 】#毎週ショートショートnote
「僕達の初めてのホワイトデーだね」
と、彼は都心から2時間の所にある別荘をくれた。
私は、ホワイトデーにその別荘へ行く。
そこで彼は、毎年、毎年、私に彼の所有物をくれる。
そのうち私はその別荘で、彼の物を整理整頓しながら暮らすようになった。
彼の都会の部屋はだんだん所有物が無くなり、彼は“快適だ”と言うようになった。
私は、どんどん心が重くなるのを感じるようになった。
少しずつ、彼から貰った物を処分するようになった。彼に内緒で。
ある日から、彼は別荘に来なくなった。
彼に連絡が取れなくなり、都会の部屋へ行ったがいなかった。
彼を探したが、見つからない日々が続いた。
次のホワイトデー、宅急便でお返しが届いた。
私は小さな箱を開け、テーブルの上に中身を置いた。
彼の喉仏は、ポツンと行き場をなくしたように見えた。
私はそれを開いている窓に向かって、おもいっきり投げた。
裏の雑木林へ、スーっと吸い込まれていった。
「これで、彼の断捨離が終わったわね」
と、つぶやいた。
(419文字)
(使用したイラストは、イラストAC様よりお借りいたしました)