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通勤費は曖昧
1、通勤費の不正受給
会社が従業員に支給する通勤費って、とてもルールが曖昧で、ある意味危ないなと思うことがあります。
解釈しだいで、不正と思われる・・・
通勤費の不正受給について説明している弁護士の方のブログに、こんな記述がありました。
・自宅とは違う場所から通勤をし、通勤費を浮かせる。
・会社に届け出ている経路とは違う経路で通勤をし、通勤費を浮かせる。
・公共交通機関を使わず、自家用車や自転車で通勤をし、通勤費を浮かせる。
このような事例は確かに不正だと感じます。
しかし、「通勤費を浮かせる」という部分を省けば、私たちは毎日の通勤のなかで、時々この①②③のような行為をすることがありますよね。
2、あなたは毎日自宅から出勤し、自宅に帰りますか?
会社に届けている自宅からではなく、もっと会社に近い場所から毎日のように会社に通い、通勤費を浮かせる。
「会社の近くの友人・知人のアパートから毎日通勤している。」
「自宅は実家なのに、会社の近くに部屋を借りて、そこから毎日通勤している。」
このような事例は不正でしょう。
しかし、私たちは毎日、必ず自宅から出て会社に向かい、仕事が終われば必ず自宅に帰っているわけではありません。
「今日は、親の様子を見るために、会社が終わったら実家にいって泊まる。
明日は実家から会社にいく。」
「先日、飲み会があって、終わったあと会社の近くに住む同僚の部屋にみんなで泊まった。」
「今日は、仕事が終わったら彼女の部屋で一緒に過ごす。」
こんなことは、誰にとっても日常茶飯事でしょう。
これらの行為は、厳密にいえば会社に届けた自宅から通勤していません。
会社から支給されている通勤費よりも安く通勤できたのなら、その日分の通勤費は会社に清算・返金すべきでしょう。
でも私のこれまでの社会人生活のなかで、そのような清算を会社から求められたという話を聞いたことがありません。
3、いつもと違う経路で通勤することはありませんか?
これも同様です。
会社に届け出た経路とは違う電車の路線やバスで会社に行ったり・家に帰ったりすること・・
たまにあります。
「今日は残業で遅くなって、ちょうどよいバスがないので、遠回りだけど電車で帰るとか・・・」
自宅から会社への経路や交通機関が何通りかある人って、決して少なくないと思います。
そのうち、最も通いやすい経路を会社に届け出て、通勤費の支給を受けている方が多いのではないでしょうか。
いつもと違う電車で帰って通勤費少し浮いたけど、その返金を会社に求められたっていう事例も、あまり聞いたことがありません。
4、いつもと違う手段で通勤することはありませんか?
自家用車通勤や自転車通勤を就業規則で禁止している会社は多いと思います。
会社が禁止しているにもかかわらず、これらの手段で通勤をし、通勤費を浮かせる行為は、不正と見なされるでしょう。
しかし、これも現実では様々です。
例えば、子育てしている方によく見られますが・・
出勤時、まず自宅から自家用車や自転車で保育園や実家に行き、子供を預ける。
その後、自家用車や自転車を近隣に預け、そこから最寄りの公共交通機関で会社に行く。帰りはその逆。
通勤費は、会社に届けている自宅・会社間とは異なる金額の場合もあるでしょう。
この行為が毎日のルーティンなら、会社に届けて適正な通勤費の支給を受ける必要があります。
しかし、父親・母親がその日ごとの仕事や実家の状況との兼ね合いで協力しながらやっている場合、日々の通勤費清算は困難ですし、現実的に会社からそれも求められるという話を聞いたことはありません。
会社が禁止している自動車通勤・自転車通勤に該当するのかも少しファジーです。
ちなみに、労働者災害補償保険法では、上記の子供を預けるための経路上で事故が発生した場合、通勤災害と認定される可能性が高そうです。
通常は自宅・会社間の合理的な経路から外れた瞬間から、以降の移動は通勤とは見なされず、その際の事故も通勤災害とは認定されません。
しかし、子供の送り迎えについては、合理的な経路から外れたとは見なされないケースが多いようです。
つまり、上記のようなケースは労災保険法上は自動車通勤・自転車通勤なのです。
5、結局、頻度と悪意の問題
お読みになっているみなさんはお気づきだと思いますが、結局は頻度の問題です。
月に1回や2回程度の話であれば、そもそも通勤費は定期代で支給しているし、いちいち清算をする事務も煩雑でかえってコストがかかるため、会社も従業員もスルーするしているのが、実態のようです。
さらに言えば、本人に通勤費を浮かせようという悪意があるかどうかの問題でもありますね。
毎日会社に届け出た自宅とは異なる場所から出勤をし、結果通勤費を浮かせている。
こうなると、恒常的で悪意があり、不正と認定されるのもやむを得ないでしょう。
一方、月1回程度のどうのこうのは、問題にしない・・
しかしながら、頻度も悪意も客観的な基準ではありません。
人によって、恣意的にどうにでも解釈できる。
従業員がさほどの問題と捉えていなかったのに、会社が「不正」と認識し懲戒処分をする。
従業員は不服として裁判に訴える・・・
冒頭にあげた弁護士の方のブログでは、このような事例が紹介されていました。
私の読む限り、会社が負けるケースのほうが多いようです。
そもそも通勤費に関する会社のルールが曖昧だ!というのがその理由です。
やはりポイントは、就業規則にルールをきちんと明記することです。
「月〇日以上、本来の経路・手段とは異なる通勤をした場合、従業員は会社に報告しなければならない」
「月〇日以上、テレワークや有給休暇取得をした場合、〇〇の方法により通勤費は清算する」
などなど・・
飲み会が遅くなって近くのホテルに泊まったら、後日会社から通勤費の不正をしたと言われて、懲戒処分を受ける・・・
(おおげさですね・・)
こんなこと、あってはならないと思います。
会社・従業員ともに守るためには、客観的な数値によるルール制定は大切だと思います。