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月収8万8千円の壁・・・どういうこと?

前回、妻が夫の健康保険の披扶養者となる条件、130万円の壁について書きました。

しかしながら、この件には更に話を難しくしている制度があります。
それは、月収8万8千円の壁。

少し前置きも長くなりますが、これから順に言及したいと思います。

年収130万円未満は、妻が披扶養者になるための条件です。
逆に言うと、年収130万円以上なら、妻は自分の勤務先の健康保険に、本人として(披保険者として)、必ずしも加入できるわけではないのです。

本人の社会保険(健康・介護・厚生年金)加入要件は、週所定労働時間が(定時の労働時間が)、その勤務先の正社員の所定労働時間の4分の3以上です。

つまり、自分の健康保険証を持つ場合の基準は労働時間なのに、夫の披扶養者として健康保険証を持つ場合の基準は、金額なのです。

正社員の週所定労働時間が40時間とすると、その4分の3は週30時間。
週所定30時間未満で、年収130万円以上稼いでいるパート社員の方は、自分の勤務先で社会保険に加入できず、夫の披扶養者・第3号にもなれません。

自分で国民健康保険、国民年金に加入するしかないのですが、そのような人は稀でしょう。
働き損にならないよう労働時間を大幅に増やすか、年収130万円にならないよう調整するか、いずれかになるでしょう。

家庭の事情などで調整が必要なパートの方の場合・・・
時給840円、週29時間45分の労働で年収は約130万円となります。

ネットでググると、最低賃金が最も低い県は岩手県の893円。
全国平均は1004円。東京都が最も高く1113円とのこと。

と言うことは、日本全国どこでも週29時間45分以上働くと、
夫の健康保険の披扶養者にはなれないのです。

最低賃金で働いて、夫の健康保険保険の披扶養者で居続けための(年収130万円未満にするための)、週あたり労働時間の上限は、
岩手県で約29時間、全国平均なら約25時間、東京都なら約22時間です。

国は、これじぁ
1、女性の社会進出がすすまない。
2、パートの方々の将来受け取る年金額が少ない。
3、今の年金財源が確保できない。
と判断したのでしょう。

パート社員の社会保険加入要件を引き下げました。
以下の条件全てに該当すれば、パート社員の方は社会保険強制加入です。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上

  2. 所定労働時間分の給料月が8万8千円以上

  3. 雇用期間見込みが1年以上

  4. 学生以外

  5. 社会保険の被保険者数501人以上の企業に勤めている

週20時間、月8万8千円、501人以上で社会保険加入なら、スーパー、外食、清掃などの大手企業で働く主婦パートの方々のうち、相当数が該当します。

ところで、103万円や130万円を越えないように調整するのは、どちらかと言うとパートさんの本人の責任です。
各ご家庭の問題として、会社はあまり深入りしない印象です。

けれども、「週20時間、月8万8千円なら社保加入」は会社の責任として、雇用管理をしなければなりません。

大手企業であれば、「社保加入のパート」「社保に加入しないパート」の枠組み・区分を作り、雇用管理をしています。
パートさんの本人と面談なども行い、どちらにするかを決めている会社もあるでしょう。

そして、社保加入でないパートさんに対しては、週20時間未満の雇用契約を結び、残業を含めた給料も月8万8千円未満になるよう管理をするでしょう。

問題は、パートさんが、更に言うと面談をする上司の方も、これまで述べてきた103万円、130万円、8万8千円など各制度の正確な知識がないことです。

これは私個人の経験ですが、パートさんからこの手の扶養の話を聞いた際、正しい話をしている方に会ったことがありません。
制度が難しすぎるのです。

パートさんにとっては、夫の収入や制度、お子さんの年齢、働くことに対するご本人の価値観など、ほかに検討しなければならないことがたくさんあるにも関わらずです。

もっとシンプルに、たとえばせめて金額だけでも税と社保の基準を統一すべきと思います。




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