人見知りなのに接客業をする女~「かくれ繊細さん」の私 5(最終話)
みゆです。
接客も伴う仕事をするようになってずいぶん長い年月がたちました。月日がたつのは早いものです。過去の私が知ったら驚くばかりでしょうね。
前回は、転職先が決まって前の会社を退社した所まで書いていました。今回はその後の話です。
退社して、次の職場にいくまで2週間ほどあります。私は親に代わって家事をしたり、ぶらぶら1人で出掛けたりと気ままに過ごしていました。その間、職場で履く靴を買ったり美容院に行ったりと準備をしつつ、いよいよ出社当日を迎えます。
新しい職場までは朝の時間帯だと車で20分ほどです。今までとは逆に西に車を走らせます。会社が近くなるにつれ緊張してきました。車を駐車し、会社に向かいます。
「おはようございます!今日からお世話になる〇〇です。」
入口で挨拶すると中に通され社長、店長から一通り説明を受けました。まず、6月一杯は試用期間である事、正式な制服はその後になるから前のデザインの制服を着る事。あとは、大まかな仕事内容の事など。
着替えた私は朝礼の時、社員の皆に紹介されました。ここでも挨拶をし、皆の自己紹介を聞きました。ここは自動車会社なので、男性社員が多く以前とは真逆です。
その日は土曜日だったので、晩に私の為に歓迎会を開いてもらいました。嬉しい事ですが、いきなり過ぎるでしょうよ(と言えない小心者)。
お酒には飲まれない私はその力も借りて、何とか溶け込めそうな所まで持って行きました。皆と気が合う訳ではないけれど、気が合いそうな人も何人か目途がつきました。女性社員とは仲良くないと仕事がしにくいものですが、こちらも仲良くなれそうで一安心です。
私の仕事は、ショールームにいて経理事務、登録業務、その他雑用、あとは接客をします。余談ですが、仕事に慣れた頃には納車引き取りに使われたりもしました。ずっと社内にいると息が詰まるので、納車引き取りはいい気分転換にもなっていました。裏を返せば、社内の何でも屋さんともいえます。
慣れない仕事を覚えたり、社員の皆となじもうと頑張っているうちに無事に試用期間が終わり、正式な社員になりました。新しい制服ももらいました。デザイナーズ制服で、おしゃれなデザインでした。
正式な社員になったし、がんばるぞ!・・・とは思ったもののカーディーラーを少々見誤っていました。めちゃくちゃ忙しいのは予想外でした。
大きな自動車会社では本社機能が別にある所もありますが、私が勤務していた所は本社機能はありません。だから、本店業務もしなくてはならず、それはそれは忙しい所だったのです。おまけに、人見知りの私は接客業もこなさなくてはならず慣れるまではキツイものでした。
当時はバブルがはじけた直後くらいだったので土日に展示会があると、わらわらとお客様がやって来ます。そうなると自分の仕事もままならず、お茶出しやカップ洗いに営業への引継ぎなどなど座る暇も無いくらいです。お客様がひと段落する頃から事務仕事をしますが、終わる頃にはぐったりでした。
カーディーラーのショールームにいる女性社員は華やかなイメージがあります。しかし、実際は真逆です。確かに見た目は華やかです。お客様の前ではにこやかにしなければなりませんが、見える所で事務仕事もするのでにこやかに事務仕事とかきつ過ぎます。また、身だしなみも大事な事です。メイクもきっちり、細かい所にも気を抜けません。もともとおしゃれは好きでしたが自然と美容系の事も好きになっていきました。
当時は分からなかったとはいえHSPの気があるので、周りが期待している私に無意識になろうとしていたようです。それは「いつも明るくて、少しドジっ子だけど、仕事は任せられる人」という人物像です。素の私は、人見知りだし、ネガティブだし、人と関わるのは好きだけど疲れるし、家に帰って一人反省会をするような人物です。だから、そのギャップで精神的に参ってしまう事も多くありました。そのせいか、外で働いていた頃は仕事帰りにわざわざ遠回りして好きな曲を掛けながら1時間くらいドライブして帰宅していました。純粋な1人の時間って車の中くらいでしたから。
けれど、HSPの気があるという事は悪い事ばかりではなくいい事もあるんです。接客の仕事をする時には、なかなか使える性質なのです。その場の空気が読めたり、お客様の言わんとしている所が感じられたり。
共感性がある分、人柄のいい方と接するのは楽しくていいのですが、その分当たりの強い方や高圧的な方と接するのは人より消耗してしまって苦手です。
また、朝の会議の時に2階にお茶を持って行ったりすると上の人に詰められている営業さんの姿を見るのも胸がきゅうっとなって辛いものでした。何年かたった頃、営業をしない?と勧められた事もありました。興味はありましたが、会議で詰められるのに耐えられなさそうでお断りしました。
きつい事も多かったけれど、私を理解してくれる人達に助けられ、またお客様と接したりでなんとか楽しく会社勤めをしていました。
そして、縁あって結婚して退社しましたが、嫁ぎ先も家族経営で同じ様な事をしている所でした。私も当然そこで仕事をする事に。それは今も続いています。
今思えば不思議なものです。人見知りで基本ネガティブなのに、接客もともなう仕事をこんなに長い間続けているなんて。今では多少要領も良くなってきたとはいえ、人見知りは変わらずなかなか自分からグイグイお客様と接する事はできません。でも、お客様に寄り添ったり、じゃまにならない接客を心掛けています。本当に世の中何が起こるか分かりませんね。
今、HSPの気があって辛い思いをしている方も多くおられると思います。だけど、私がこんな仕事について上手く折り合いを付けていられるように、どこかに生きやすくなる糸口が見つかると思っています。そのキッカケはほんの偶然から生まれる些細な事かもしれません。HSPの方はアンテナを張るのが得意だから、きっとそのキッカケを掴んでいけますよ!
これでかくれ繊細さんの話は一旦終わります。また何か書きたい事が出てきたら書くかもしれませんのでその時は良かったら読んで下さいね。