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【旬杯リレー小説・承】未来の約束


 ジリジリと太陽が照り付ける午後3時。やっと終わった夏期講習の3日目の帰り道、一緒に帰り道を歩くしんちゃんに声を掛けた。
 「しんちゃん、これからヒマ?ちょっと冒険しない?」
 「冒険ってなんだよ?」
 「ねえ、ここから電車に乗って海に行こうよ!」
 「お、いいね!受験生にも息抜きは必要だよな」

 塾の最寄駅から3つ先に海がある。家とは反対方向の電車にしんちゃんと乗り込んだ。平日午後の電車はいていて席はいていたけど、あたしもしんちゃんも入口のそばに立っていた。あっという間に電車は3つ先の駅に着き、電車から降りるとあたしは海の匂いを思いきり吸い込んだ。

 「電車に3つ乗っただけなのに、すっごい遠くまで来たみたいだよね」
 「そうだな。ほんとなら朝から来て泳ぎたいとこなんだけどな」
 「そんな事言ってさ、しんちゃん、あたしの水着見たいんでしょ?」
 「何言ってんだよ、んな訳あるかい!!」
 せっかく海まで来たというのに、あたし達はいつもと同じ様に軽口ばかり言い合って笑い合った。本当なら、大事な中3の夏休みだからこんな事をしている場合ではないのかもしれない。だけど、あたしはどうしても今日は海へ行きたかった。しんちゃんと海へ行きたかったんだ。今日が一生忘れられない大事な日になるって、そう思ったんだ。

 しんちゃんは、あたしにここで待つように言うと向こうへ駆けていった。海を見ながらぼんやりしていると、急にほっぺがひんやりした。慌てて振り向くとしんちゃんはかき氷を手に笑っていた。
 「ほら、かき氷。一緒に食べよう」
 差し出されたかき氷は、あたしが好きなイチゴ味に練乳がたっぷり掛かったやつだ。でも、1つしかない。もしかして、しんちゃんと一緒にコレを食べるのだろうか。あたしもしんちゃんも、それぞれスプーンを手にしてかき氷を食べた。かき氷はひんやり冷たいのに、反対にあたしの顔は熱くてたまらない。それって、絶対にこの太陽のせいだけじゃないと、思う。

 海は太陽の日差しを受けてきらきら光っている。海水浴を楽しむ人達のずーっと向こうにはヨットがたくさん浮かんでいる。そんな景色を見ていると、受験の事ばかりが占めていた頭の中がふんわり緩んでくるようだった。

 「あたし達、これからどうなるのかな」
 「そんなもん、誰にも分かんないさ。ただ言えるのは、今やるべき事を一生懸命やっていくだけなんじゃない?」
 「あたし、受験が怖いんだ。それに、みんなと離れるのも怖いの」
 「怖いのは誰でも一緒なんじゃないの?俺もみんなと離れたくはないけど、縁があるやつとはずっと繋がっていられるさ」

 しんちゃんは、言ってる事がいちいち大人だ。しんちゃんといると、あたしはとても安心できるんだけど、それと同じ位自分が子供っぽい様に感じてちょっと落ち込む。しんちゃんは少し俯いたあたしに向き合って、ふふっと笑みを浮かべて言った。
 「まあ、そんなとこも由真のかわいいとこだけどね。未来の事なんて、まだ誰にも分かんないよ。未来なんて、これからいくらでも作っていけるんだから。なあ、この先高校とか行ってさ、しばらく会えなかったとしても。10年後、俺達ここでまた会おう。俺は絶対に覚えているから、由真も絶対に覚えとけよ」

 どの位ここにいたのだろう。太陽はだいぶ傾いてきてオレンジ色になってきた。そろそろ帰ろうかと歩き出した時、しんちゃんの左手があたしの右手をそっと握ってきた。少し汗ばんだしんちゃんの左手にちょっと力がこもったから、あたしもちょっと右手に力を込めて握り返してみた。

 未来なんてどうなるのか誰にも分からないけど、今日のしんちゃんとの約束は絶対に忘れない。この夏の事、今日の海の景色も、イチゴ味のかき氷の事も、繋いだ手の感触も絶対に忘れない。10年後の夏、あたし達はどうなっているのかな……。

1549字

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旬杯のエンドロール歌詞用のリレー小説企画に参加します⭐

私は、こちらのストーリーを繋いでみました。

起ストーリー【B】/PJ 約100文字

風が吹き抜け、太陽が肌にじりじりと照り付ける。
今年は猛暑になるらしい。
海に行きたいと思った。
輝く海と、その水平線に浮かぶ白く大きな入道雲。
夏がやってくる。
生涯忘れることのない夏が。

私、リレー小説なるものを書くのは初めてで、どう繋ごうか、どういう話を書こうかと悩みました。もう、書けないかも・・・ってマジで思いました。
ですが、この曲が浮かんで、この曲を下敷きにしようと思ったら一気に話が浮かんできて書く事ができました😊


特別な夏。
絶対に忘れる事の無い夏。
10年後の夏にも逢いたいね。



今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪



#旬杯
#旬杯ストーリー承

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