選ばれなかった女〜ねるとんパーティーに参加した話
私が新卒で入った会社は、女性の比率が高い所だった。私の配属された部署はとりわけ女性が多く、数名の営業の人(おじさんばかり)を除くと、上は50歳位から下は新人の私まで女性ばかりだった。それは、良くも悪くも女子校の様な女の園だった。
歳の近い人が多く、私の教育係をしていてくれたのは1つ上と2つ上の先輩だった。先輩は、私の人見知りが原因で周囲と馴染めなかった頃も、みんなと打ち解けて楽しく過ごせるようになってからも、変わらず仲良くしてくれた。
とりわけ2つ上の先輩とは気が合って、会社帰りにご飯に行ったり、休みの日に遊びに行ったりもした。「彼氏がいない人で映画を見る会」などと称しては、先輩のお家でレンタルビデオ店でレンタルしてきた映画を見て、お菓子を食べながらおしゃべりするのも楽しかった。トムクルーズのカクテルやハスラー2などを見た記憶がある。
海の中道にドライブに行って、コスモス畑がとってもきれいだった思い出。
先輩の運転でおっきなディスコにも行った。
↑ マリアクラブではない(昔、天神の親不孝通りにあった有名なディスコ)
私は飲むから運転できないので、先輩を足に使う悪いヤツw
合コンらしきものにも連れて行ってもらった。
前フリが長くなったけれど、今回の話は先輩とねるとんパーティに行った時の話だ。
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お若い方は、ねるとんパーティってご存じだろうか。
ねるとんパーティというのは、要はカップリングパーティでパーティの終わりには告白タイムが設けられていて、男性が気になる女性の所に行き「お願いしますっ!」と告白する。もし、お目当ての女性が被った場合は「ちょっと待った!!」と割り込むシステムだ。
これは、かつてのテレビ番組のねるとん紅鯨団に由来する。
とても、懐かしい。
これと、夢で逢えたらをセットで見るのが土曜日の夜のお約束だった。夜遊びせずに家にいる時は絶対見ていた。懐かし過ぎて、泣ける。
今思えば、贅沢な豪華メンバーの番組だ。
で、私はねるとん紅鯨団も見ていたけど、その前の上海紅鯨団が行くも高校生の頃かなり見ていて好きだった。
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また話が脱線してしまった。
ある時、先輩はどこからか情報を仕入れてきて私に言った。
「みゆー。今度、ねるとんパーティ行かん?JRに乗って、遠出して遊べるみたいだよ」
ねるとんパーティ!
そんな物に行く事などまったく思った事は無かったので、突拍子もない誘いに驚いた。だけど、JRに乗って遠出できるのは楽しそうと思った。最悪、小旅行だと思えばどうという事はない。
「あ、行く行く、行きますよー!」
二つ返事でOKした。
ねるとんパーティはみんなでJRに乗って、佐世保に行くツアーだった。そこで、米軍基地のイベント(忘れていたので調べてみたらアメリカンフェスティバルというものらしい)に行ったり、九十九島に行くというものだった。この時のねるとんパーティは、どちらかといえば今の街コンに近い物だと思う。
誰か告白タイムで来てくれたらいいなとは思ったけど、そう彼氏が欲しい!!と切羽詰まった気持ちでもなかったので、ただただ遠出するのが楽しみだった。
ねるとんパーティ当日はよく晴れていた。まさに絶好のお出かけ日和だ。
駅で待ち合わせた私達は、うきうきしながら集合場所へ向かった。そこには、今日の参加者の男女がたくさんいた。誰かカッコいい人でもいないかとキョロキョロしてみたけど、よく分からなかった。
その後は、特急に乗り込み指定された席に座った。ほどなくして、佐世保に着いた。佐世保には何回か行った事はあったけど、JRで行ったのは初めてだったので、なんだか新鮮に感じた。
そこから米軍基地へ行きイベントを楽しんだ。そう、普通に楽しんだのだ。別に他の参加者と話す訳でもなく、先輩と広い敷地内をうろうろと歩き回り、何か買ってみたり何か食べてみたりという、普通にイベントに遊びに行った人状態だった。おそらく、主催者が働きかけてカップルになるために話をしたりだとかは無かったと記憶している。
その後、九十九島に行き遊覧船に乗った気がする。たしか、そこでは参加者同士で話をする機会があったような覚えがある。ただ、そこまで必死な思いで参加していなかったので、一生懸命さが足りなかったのかあまり覚えていないのだ。私の好みの人もいなかったような気がする。最も、男性側も私の事など眼中には無かったのだと思うが。
そして、いよいよお待ちかねの告白タイムの時間になった。女性がずらりと並ぶ所に男性が好みの女性の前に行き告白をする。さあ、私の所には誰か来てくれるのだろうか。
だけど、タイトルにもあるように、私の所には誰も来なかった。ついでに言うと、先輩の所にも誰も来なかった。誰も来ないまま、告白タイムは終わった。その時は、たしか数組のカップルができていたようだった。
私達は顔を見合わせて、どちらからともなく「誰も来んやったね」と言い合った。そして「見る目無いね」と言った。
その後はすっかり暗くなった中をまた佐世保駅に戻り特急に乗って帰った。地元の駅に着いた後は、どこかでお茶したりする元気も無く「また明日会社でね」と現地解散した。
ほんとに、あのねるとんパーティとは一体なんだったのか。特別彼氏が欲しいと思っていた訳ではないし、参加者に好みのタイプがいた訳ではない。だけど、だけどだ。半分お遊びだといえ、誰にも声を掛けられる事が無かったというのはこんなにダメージを受けるものなのか。
半分お遊びだといえ、私は誰からも声を掛けられない程、しょーもないヤツなのかと、悔しいやら悲しいやらだった。これでも、そこまで見た目は悪くないと思っていたし、夜遊びする時には声を掛けられた事だってある。お風呂に入っていたら、なんだかムダに悔しくなった。ええい、私の良さが分からぬヤツらなど、こっちから願い下げだ。
翌日、先輩と顔を合わせた時、昨日までの悔しさはもうどうでもよくなった。
「昨日は疲れたけど、楽しかったね。ほんとなんで誰も来んやったんやろうねー」
「ですよね!でも、あの中にカッコいい人いなかったですよ」
などとちょっと悪口を言って盛り上がった。私達がねるとんパーティに行った事はみんな知っているので、他の先輩達にいろいろ聞かれて、2人で面白おかしく説明して、盛り上がり大笑いしてスッキリした。
私達のねるとんパーティは不発に終わったけれど、普段なかなか行かない所にも行く事ができたし、小旅行としてはとても楽しいものだった。
それからも、私と先輩はあちこち出掛けたり、お家に遊びに行ったりして楽しく過ごした。もちろん、仕事もちゃんとした。この時の事は、私にとってはとても楽しくて、ちょっとしょっぱい、なんだか微妙な思い出だ。
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪