私のこと5
私は5年程前に、何か生活を変えたい、お小遣い稼ぎ、ダイエットのため、といろいろ理由はあったのだけど、我が家の飲食店の仕事の合間にできることを探して、メール便の配達をしていたことがある。
大手の会社の配達のように取りに行くこともなく、配達する前日に家まで届けてくれて、それを仕分けして自転車で配達するというシステムだった。
たまたま新聞広告で見つけて、これなら時間的にお店と両立できる!と思ってやり始めた。
配達区域が、小さい頃住んでいたところだったのも決め手だった。
始めてみると、お店が終わってからの仕分けが思った以上に大変で、配達も春は花粉、夏は暑さ、冬は寒さとの戦い!
雨の中も風の中も自転車で飛ばしていた。
あんな元気はもうない。
結構、嫌なこともあって、胸に刺さるようなことを言われたりもした。
お化粧して、エプロンをしてお店に立っている時には経験したことのない、心ない言葉や態度で扱われたことがある。
人ってこういうものなんだ、といい勉強になった。
不思議なこともあった。
小さい頃遊んでいた古い神社があって、そこに行った時わぁーっと記憶が溢れ出して、小学校の時の同級生の名前が次から次へとフルネームで頭に浮かんで、遊んでいた姿とか、楽しかった気持ちとかが押し寄せてくる感じだった。
嫌なこともあったけど、ここで遊んだなぁ、ここに○○ちゃんの家があったなぁとか、配達自体はすごく楽しかった。
いろんな経験がしたかった私は、この後、マンションの清掃のパートもやってみた。
この時はまだ配達もしていて、なんとトリプルワーク。
流石に疲れてヘロヘロだった。
そんなある日、配達の途中、坂道をものすごい勢いで下ってきた自転車と脇道から坂に出たところでぶつかってしまった。
何が起きたのか一瞬わからなかった。
私は3mぐらい、相手の方は5mぐらい自転車が吹っ飛んでしまっていた。
膝が痛くて立ち上がれない。
しばらくその場で痛みが和らぐのを待っていると、周りにいた人が沢山寄ってきてくださって、散乱した荷物や自転車を近くまで持ってきてくれた。
私と相手の方は立ち上がり、周りの方にお礼を言うと、1人、2人とその場を離れて、ぶつかった相手の方と2人になっていた。
「足、痛いですか?」と聞かれ、
「はい」と答えると
「座って」と言う。
「僕、リハビリの病院の者なんです」
と言って、私の痛む膝を歩道の脇の方で診てくださり、
「折れてはいない、打撲だと思います」
「これから訪問のリハビリなんです。仕事中だし、事故はまずいんです」
私も仕事中で事故はちょっとまずい状況だったので、お互い連絡先を交換して、何かあったら連絡すると言うことで話がついて別れた。
その先生は兄が5ヶ月間入院していたリハビリ病院の先生だった。
兄が入院中、何度かその先生を探したけど、見つけられなかった。
もう辞められていたのかもしれない。
兄がこのリハビリ病院に入院が決まった時は、これも何かの縁なんだろうかと思ったりもした、というお話。