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高次脳機能障害14
兄は現在、週3回訪問リハビリをお願いしている。
本人が月、水、金の3回がいいと希望した。
火、木、土、日は一日中フリー。
パワーハンドアシスト(株式会社エルエーピーさんのもの)という器具を使って右手のリハビリを自分でやったり、リハビリの宿題をやったり、テレビを観たり、歩きに行ったりして過ごしている。
退院当初は、ひとりで出かけるのは無理だと言われていたので、どこかへ行ってしまったら大変だと思い、スマホにGPSアプリを入れておいた。
ひとりで歩きに行くようになった時、心配でしばらくGPSを見ていたことがある。
兄は歩いて20分ほどの小さい頃住んでいた町を探索していた。小さい頃住んでいた場所、遊んでいた公園、通っていた小学校。父の工場があった場所。
どんな気持ちで巡っていたのだろう。
最近は気づいたら電車にも乗っていた。病院に通うためSuicaを買いチャージしてあったので、それを使って行ったようだ。
電車が止まってしまったら、Suicaのチャージ金額が足りなくなったら、最寄駅は各駅停車しか止まらないけどわかってるのかな?といろいろ心配だけど、その時はその時だと思うようにしている。
そうか、電車にも乗れるのか。
ちょっと驚きだった。兄は自分なりにひとつずつチャレンジしているのかな。
ただ、お金の、というか数字の計算が出来るのか、出来ないのかがよくわからない。
買い物をする時は私にやってくれと言う。
病院などでもお会計はやろうとはしない。
時々歩きに行った時、飲み物を手に帰って来ることがある。
自販機で買うことはできるらしい。
って言うことはお金のことも分かっているのかな?とよくわからない。
この先、兄の失語症がどこまで回復するのか分からないけど、今、勝手に私が思っている目標は、買い物がひとりでできるようになること、何か趣味を見つけること、この二つ。
今は私が買ったものを着て、私が買ったものを持ち、私が買ったものを使い、という生活なので、自分の好きな物を選んで自分で買えるようになって欲しい。
そして、何か楽しめることを見つけて欲しい。
バイクが大好きで今でも手放さない兄に、
何かバイクに代わるもの、バイクに関わることでもいいから見つけて欲しいと思っている。
今日は兄がリハビリの宿題や資料が入っているクリアファイルを持って、何か訴えてきた。
ファイルを開くので何か中に書いてあるのかと覗き込むが分からない。
クリアファイルは書類でいっぱいであと1つしか空きがない。
「あっ!クリアファイル買って来るの?」
と言うと
「うん!うん!」
そしてまた、何か訴える。
左手で掴むジェスチャーをするが分からない。
部屋へ来てと促され行ってみると、短くなってしまったえんぴつが2本。
笑ってしまうほど短くなっていた。
「えんぴつも買って来るのね!」
「うん!うん!」
嬉しそうだった。
スムーズに気持ちが伝わって嬉しかったんだと思う。
あんなにスッキリした顔は久しぶりに見た気がする。
何が言いたいのか分からずに、もういいと言われ帰って来ると、ずっと何だったんだろうと考えてしまう。
今日は私もスッキリした気分で帰ることができた。
こんな日が1日でも多くなるといいな。