「ママが働きやすいチーム」は、目指さない。
「ママって不利だなと思った。コロナで休業していたし、MVPに選ばれることはないと思ってた。」
7月でそれまでの査定期間が満了した弊社は、
8月の初営業日の3日、全体集会が行われた。
そこでは各職域ごとのMVP発表が行われ、
私がリーダーを務めるデザイナーのチームからは、まだ就学前のお子さんを育てるママさんがMVPに選ばれた。
冒頭のコメントは、彼女の受賞コメントの中の一節である。
彼女は子育て中ではあるが、フルタイムで働いている。
今期、コロナ禍でのお子さんの保育園休園という不可抗力に伴い、休業期間は確かにあった。
だが、彼女は持ち前のスピードとクオリティで、定量・定性ともに非常に優秀な成績を収めている。
その達成度は可視化しているので、彼女自身もそれは知っていたはずだ。
それでも、彼女は自分がMVPに選ばれることはないと思っていた。
小さい子どもを育てる親にとって、
子どもが熱を出したら保育園から呼び出しがあること、
子どもの体調不良や今回のようなコロナ禍などでは、仕事を休まざるを得ないことがあること。
それらが、いかに子育て中の親たちを追い詰め苦しめるかが分かる。
弊社は、業界の中でもとりわけ子育て中の社員が働きやすい会社であると思う。
社長にも子どもがいる。
会社のリーダー層にも子育て中の者も多く、女性は言わずもがな、男性社員の育休取得率も80%(※2019年〜2020年7月)の会社である。
そんな環境であっても、やはり子育て中のママには「休んで申し訳ない」という想いがあるのた。
子育てに理解のない企業での、子どもを育てる親の苦悩は計り知れない。
だが、ママを特別扱いし、「ママが働きやすいチームをつくろう」という試みは、心意気は良かれど、それだけでは十分ではない、というのが私の意見である。
仮にママだけが帰りやすい、休みやすい環境を作り、まだ独身の社員がその負担を担うようなチームがあったとしたら、どうだろうか。
フォローをしている社員の不満は募り、
ママたち自身も「先に帰って申し訳ない」「休んで申し訳ない」という気持ちにならないだろうか。
そういったチームでは、ママの働きやすさはサステナブルでないと考える。
(尚ここまで触れてこなかったが、私自身も2歳の息子を育てる、いわゆる「ワーママ」であり、子育てをしながら会社に勤める立場からもこの意見を述べている。)
人生にはさまざまなライフイベントやステージが存在する。
結婚、妊娠・出産、育児、介護…
仕事以外にリソースの必要な時期は、誰にでも存在し得るだろう。
もっと言えば、日々の体調不良、家庭の事情…
誰しも24時間365日万全で働ける訳ではない。
なので、子育て中のメンバーだけでなく、どんなライフステージのメンバーでも、スキルを持った方が存分に活躍できるチームが、私が目指すところである。
ママが働きやすい、ではない。
誰もが働きやすい、を目指すことで、本当にママも働きやすい場所になるだろう。
MVPの彼女は人格者である。
受賞コメントの際には「自分の休業中はたくさんの人に助けてもらった」「皆さんのおかげでいただけたMVPである」と続けた。
そんな彼女にMVPを贈れて、心から良かったと思った。
とはいえ、現時点で彼女が休業を申し訳なく思っていたのは事実である。
より一層精進し、仮にメンバーの誰かが休業したとしても、周りに感謝こそすれど、申し訳なく思うことのないようなチームにしていきたい。
私は「ママが働きやすいチーム」は目指さない。
「誰もが働きやすいチーム」を目指して、皆がそのスキルを余すことなく発揮できるよう、より一層チームづくりに励んで行きたい、と感じた日であった。
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