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綾瀬さんと真谷くん17「卒業式」

桜舞い散る3月の下旬。今日は姉ちゃんの卒業式だ。
「今日は姉ちゃんの卒業式か…」
正門横には{第七十一回清巌高校卒業式}と大きく書かれた立て看板が置かれている。正門前で突っ立っていると
「優おはよ!」
と声がした。声がした方に振り向くと響が立っていた。
「おはよ響」
「それじゃ、体育館に行きましょうか」
在校生は先に入る決まりだ。
「うん」
式典会場である体育館へ向かうと、すでに多くの生徒たちが集まっていた。自分たちの席を見つけ、そこに座る。
しばらくして
「卒業生が入場します皆さん大きな拍手でお出迎えください」
とアナウンスが流れた。そして、盛大な拍手と共に卒業生が入場してきた。その中には姉ちゃんもいた。目立つなぁ……何もしてないのに目立つってなんだよ。卒業生全員が入場し終えてしばらくすると、
「ただいまより、第七十一回清巌高校卒業式を開式します」
とアナウンスが流れた。その後、校長の挨拶という名の長話があった。あれだけのことを事前に話そうと準備するのは大変だろうに。もっと短くてもいいんだけど、などと思っていると、
「卒業証書授与」
とアナウンスがあった。順繰りに卒業生の名前が呼ばれ、卒業証書を受け取る度に大きな拍手が起きる。姉ちゃんの番が来た。
「3年4組18番 真谷奏音」
と名前を呼ばれ、壇上へあがって行った。卒業証書を受け取ると一礼して戻って行った。珍しくよそ行きの顔でパキパキした歩き方をしてたなぁ。全員が卒業証書を受け取った後
「続いて学年主席の在校生に向けてのスピーチです」
とアナウンスがあった。大きな拍手とともに姉ちゃんが生徒たちの前に立った。
「在校生諸君、こんにちは。風紀委員を勤めさせてもらった、真谷奏音だ。天気にも恵まれた今日、我々三年生は曲がり角をまがり、人生における次の小径を歩いていくことになる。我々はもはや、在校生ではない。証書をもらった諸君はそれを胸に刻め。そして夢に向かって邁進していこうではないか。さて、これからこの学校に残る諸君にメッセージだ。私がいなくなったからと行って羽目を外さぬように。特に!浮かれたつ気持ちは分かるが。恋愛如きにうつつを抜かしたり、あまつさえそこで揉め事を起こそうなどと画策するようなことは諸君の品位を貶める所以、決してしないように心掛けろ。いいな。では諸君。私は静砡学院へ向かう。君たちも良き人生を送りたまえ」
あちこちに色々牽制やら自慢やらしたいだけしていったな、姉ちゃん。確かに静砡は難関だけどさ。
そんな姉ちゃんの魂胆に気がついていない聴衆の大きな拍手とともに姉ちゃんが一礼して戻って行った。これで式は終わり。そのあとは運動場での写真撮影の時間があるか。

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