綾瀬さんと真谷くん42「コイバナ」
三が日も過ぎて、特にやることもないので和室の炬燵で兄ちゃんとみかんを食べていた。
話すこともないので黙々と食べていた。しばらくすると玄関が開く音がした。
「ただいまー」
姉ちゃんが帰ってきたようだ。
「おかえり」
「どこ行ってたの?」
「穣のアパートに行ってた。聞いてよーあの人ったらさー私を家に招いておきながら自分はぐっすり寝ていたのよ。寝顔が可愛かったから写真も撮っちゃったそれで、身支度も手伝ってあげたのよもしかしたらあの人は私がいないとダメになっちゃうんじゃない?」
既に駄目じゃないか。というツッコミは心の中にしまっておいた。
「それにさー掃除とか料理とか私がやってあげなきゃいけないし、本当にいつもどうやって生きているか心配でしかない」
「これただのダメ男だったら奏音酷い目に遭ってたな」
「えーそんなことないと思うけどなー」
「いいやひどい目に遭うと思う」
兄ちゃんが言う。まさにその通りだな。
「そういえば響もさーこの前響の家で一緒に勉強しないかって誘われて、行ったら部屋で机に突っ伏して寝てたんよ。だからこっそり寝顔撮ってから起こした」
「見せてよ」
「嫌だ見せたくない」
「なんでだよー」
「響は僕だけのものだから」
「優がロック画面にしてるの見たことある」
姉ちゃんがそう言う。
ふーん見たことあるのか。
え?
「い、いつ見たの?」
「んーこの前かな」
「……」
思わず固まってしまった。
「不用心だな」
その通りすぎてぐうの音も出ない。
「俺の朱実もさ家に招かれて行ったらさ、ドア開けた瞬間に家の中に引っ張られてめちゃめちゃに甘やかされたわ」
「セイくん来てくれてありがとう~」
「ちょ、朱実離してよ」
「え~いいじゃ~んセイくんの反応が可愛いからもっと甘やかしたくなっちゃう」
「その後10分にわたって甘やかされたわ」
「セイはそういうの慣れてないもんな」
姉ちゃんがそう茶化す
「余計なお世話や」
和室がどっと笑いに包まれる。
「話すこともなくなったしお開きにするか」
「そうだな」
その後は各自部屋へと戻って行った。