綾瀬さんと真谷くん77「ラフティング」
そして響の番になった。
恋は直球勝負、狙いはしっかり定めなきゃ
(間奏)
この思い引き絞って君の心に一直線!
サイトもスタビライザーもないけれど
正射必中、真正面から
コンパウンド・ボウの速さでしっかり撃ち抜いちゃうぞ!
ちょっとずるくてごめんね、でも本気だから手加減できない!
止まらないトキメキ、駆け抜ける青春は馬に乗って
君の心も射止めちゃうから覚悟して!
----------------------------------------------------------
大盛況だったレクリエーションから一夜明け、今日は吉野川の大歩危でのラフティングがある。
ラフティングは簡単に言えば川下りで、激流の中川を下っていくスリルを味わうものだ。
バスに乗り、ラフティングの体験場所へと向かう。
1時間くらい揺られて体験場所へと着いた。
まずはウェットスーツに着替え、インストラクターさんの説明を受ける。その後スタート地点へと向かい、 ラフティングが始まった。ラフティングのゴムボートはインストラクターさんを含めて9人乗りだ。
男子と女子で半々になるように分けられた。男子4人は揃ってるのであとは女子の4人班が来るだけだ。
しばらく待っていると
「おまたせ~」
やってきたのは響と井崎さんと城ヶ崎さん。そして秋元さんの班だった。
響たちの班が来るとは思ってなかったのでちょっとびっくりした。
「お、真谷くんと一緒なのか」
「ラフティング楽しみましょうね、優」
「うん」
「よろしく……でいいのかな?」
井崎さんが不安げな口調で挨拶する。
程なくしてラフティングがスタートした。
ボートを漕ぎながら最初の激流ポイントへと向かった。
ふと横を見ると城ヶ崎さんの横顔が見えた。
クラスで人気があるのも頷けるほどの顔立ちをしていた。まぁ響には敵わないけどね。
これ以上見てたら響の怒りを買いそうなのでやめとこ。
雑談などを交しているうちに最初の激流ポイントの豊永の瀬に到達した。
豊永の瀬は大きな波に乗りながらいくつかの岩を避けていくテクニカルなポイントだ。
増水時などは特に流れが速くなるそうだ。
今の状態でも充分速いのに増水時だったらと思うと少し背筋が凍った。
豊永の瀬を突破した次に待ち構えていたのは大歩危コースで1番激しいと言われる三段の瀬だ。
大きな波がアルファベットのVの字のように立っていることから、別名「Vストッパー」と呼ばれているらしい。
説明を思い出していると急に波がうねり、まるで波に体当たりしているような感覚になった。
ふとボートが停止した。飛び込みポイントのようだ。
「飛び込む人はいませんか?」
インストラクターさんが訊く。
よしここはトップバッターで行きますか。
手を挙げ、ゴムボートの後ろの方まで向かう。
船尾にたち、ボートの上をかけるように渡りゴムボートの先頭にたった瞬間に踏み切り、一回転して飛び込んだ。
その衝撃で大きめの水飛沫ができた。
川の水は秋だと言うのに異様に冷たかった。
インストラクターさんに手を引かれゴムボートの上へと引き上げられた。
2番手は以外にも響だった。
響も勢いよく飛び込み、水飛沫が辺りにたちこめた。
その後も交互に飛び込みをして最後の激流ポイントの岩原の瀬に到達した。
大きな岩に吸い込まれないように避けていくポイントだ。
吸い寄せられると岩に乗り上げたり、ボートがひっくり返るそうだ。
岩に吸い寄せられないように必死に避けていくとゴール地点が見えた。
ゴールまでは近いのでボートから降りて泳いで陸に上がることになった。
てか泳ぐとか聞いてないよ。
周りを見ると我先にと陸をめざして泳いでいた。
ここからだと陸は近いな。よし先に着いてやろうじゃないか。
必死に泳ぎ、ゴール地点へと上陸した。
「ふぅ……ラフティング楽しかったな」
ヘルメットを取り最初にウェットスーツに着替えた場所に向かい、体操服に着替え徳島のお土産屋へと向かった。
何を買おうか……
色々と悩んでいると、木刀を見つけた。
これ割りと修学旅行あるあるだと思う。
中学の時も木刀1振り買ったし。その木刀は今でも部屋に飾ってある。
予算は充分にあるし、少し高めの木刀を買うとしよう。
木刀の他にも今治タオルを使ったハンカチやご飯のお供などを買った。
買ったものをサブバッグに入れ、バスに乗る。
あとは学校へ帰るだけだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?