綾瀬さんと真谷くん46「バレンタイン」
今日はバレンタインだ。今年はチョコ何個貰えるのだろうか。そう思いながら学校へ向かう。
教室へ入ると既に何人かがチョコの受け渡しをしていた。
対して僕は今のところ中学からの同級生から貰ったひとつだけだ。
放課後になり教室に残っている人もまばらになった時、響が僕の席にやってきた。
「ゆ、優、これ、受け取ってくれる?」
響が恥ずかしそうにチョコを僕に渡した。
「え、これ、もしかしてチョコレート?」
「うん、手作りなんだ……」
僕のために作ってくれたのか。なら受け取るしないよね!
「あ、今食べちゃってもいい?」
「もちろんです!喜んで貰えて嬉しい限りです」
「いただきます」
僕はチョコトリュフをひとつ摘み、口に入れる。
「んー、美味しい。響って本当に器用だな」
「そうだ。 二つ目は、響が食べさせてよ」
「そうですね。 せっかくなので恋人らしくあーんさせてもらいましょう」
響はそういうとチョコトリュフを白くて長い指でひとつ摘み僕の口に放り込む。
少しして噛み砕いたものをごくりと飲み込んだ。
「お味はどうですか?」
「響が食べさせると4倍美味しく感じるよ」
そう言うと響は顔を赤くして俯いてしまった。
「どうしたの?どこか具合が悪いの?」
熱がないか額に手を伸ばそうとしたら腕を掴まれて、引っ張られるようにして帰路につくことになった。
「優はどうしてそんなにも褒めるのが上手いのですか?」
「どうしてって言われてもなぁ……そうだなぁその人のことをよく見てるから?」
「そうなんですね。私、実はあまり褒められ慣れていないのです。だから褒められると俯いてしまうことがあるんです」
「なるほど。なら褒められても俯かないようにしたらいいんじゃない?」
「次からそうしてみます。 アドバイスありがとうございます」
「僕は君の彼氏なんだから彼女が困っていたら手を差し伸べるのが普通さ」
色々と話してるうちに響の家の近くまで来た。
「それではまた明日学校で」
「うん、また明日学校で話そうね」
響が家の中に入るのを確認してから自分の家への帰路についた。