綾瀬さんと真谷くん62「演劇の役決め」

  何故かクラス対抗で劇をやることになった。
事の発端はこうだ。
今日の朝の学活で担任が
「8月の夏休み明けにクラス対抗で劇を演じることになった」と告げたことだった。
しかも全学年強制参加とかいうおまけ付きで。
夏休み明けにやるとか何考えてんだと思ったがもう決まったことなので仕方ない。
話し合いを重ねた結果僕のクラスは「眠り姫」をやることにした。
眠り姫か……ふむ悪くないな。
確か台本は演劇部の資料置き場にあったはず……。
衣装とかもそこにあるはずだ。
まぁそこら辺は演劇部の人が何とかしてくれるだろう。

-演劇部資料置き場-

「確か台本はこの辺りに……あったあった」
『眠り姫台本』と書かれた箱の蓋を開けるとそこには確かに台本があった。
「一応中身確認しとく?」
「いいんじゃない?」
中を開くと途中までは眠り姫だったのだが、何故か白鳥の湖と融合し見事な魔改造が施されていた。
「これ奏音先輩の代に作られた台本じゃない?」
「あ、ほんとだ」
台本の裏表紙を見ると右下に小さく先代の演劇部部長の名が書かれていた。
「にしてもどうして白鳥の湖と融合させたんだろうね」
「私にも分からないや」

-教室-

「うぅ寒……」
なんだこの得体の知れない寒気は。
「おい真谷ァ今はもう夏だぞぉ」
クラスメートの男子一人が揶揄うに言った。
「そこはわかってるわ。でも何故か寒気がしたんよ」
「なんだそれ」
まぁそれはどうでもいい。
役を早く決めて欲しいところではあるが。
そう思っていると、進行役のクラスメイトが「それでは役を決めていきたいと思います」と言った。「主人公であるオーロラ姫の役をやりたい人いませんか?」と訊くが、誰も手を上げない。
一旦保留になるかと思ったら、響が手をあげた。
なら僕は魔女に立ち向かう王子の役をしますか。
「王子の役をやりたい人はいませんか?」
僕はすぐに手を上げた。
そのあとはスムーズにほかの役が決まっていき、主要人物の役決めが終わった。
多分来週あたりから、衣装合わせと練習が始まると思う。気を引き締めないとな。

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