綾瀬さんと真谷くん79「発表会」
そう言えば明日、母校の小学校で多文化共生発表会なるものがあるって聞いたな。
明日土曜だし早起きして行ってみるかぁ。
-翌日-
バスに乗り、小学校の最寄りの停留所で降りる。
「懐かしいな……」
小学校を卒業してからこの地に来たことがないから実に9年振りに戻ってきたことになる。
懐かしい気持ちでいっぱいになり思わず早歩きになる。
そのおかげか、少し早めに到着した。
高鳴る鼓動を抑えつつ、インターホンを鳴らそうとしたその時、先生が近くにやってきた。
「あ、先生!」
「どうしました?」
「多文化共生発表会って一般の方でも見れたりしますか?」
「関係のあるものしか入れないんだけど……」
「あ、卒業生です」
卒業生という言葉にピンと来たのかこう切り出した。
「あ、君覚えてるよ!優くんだよね?名字なんだっけ?」
「真谷です……」
「ちょっと聞いてくるね」
そう言って足早に講堂へと向かった。
大丈夫かな……
しばらくして先生が大きな〇のジェスチャーをしながら戻ってきた。
「特別に許可が出たから入って来ていいよ〜」
「わかりました」
許可降りたのか。すごいな
目の前の、車が出入りする用の門を開けて中に入る。
「どうして多文化共生発表会やるってわかったの?」
「小学校の様子変わってないかなと思ってホームページ覗いたら、創立50周年経ってて記念式典とかやったのを知って久しぶりに行ってみようかなと思ってきました」
「そうか、ここの卒業生だもんね」
講堂に入り、来場者名簿に名前を書いて保護者席に座る。
しばらくして牡丹の会の発表が始まった。
牡丹の会とは中国にルーツを持つ児童が所属する国際クラブだ。
僕は所属してなかったけど、発表会で漢詩の群読を聞いたりした。
そして群読する漢詩の説明が簡潔にされた。
群読するのは
「春暁」
「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」
「春望」
の3つのようだ。
スクリーンには万里の長城の写真が映し出され、中国ときくと連想するいかにもな音楽が流れた。
『春暁』
『春眠暁を覚えず処処啼鳥を聞く夜来風雨の声はなおつることしる多少』
1つ目が終わったようだ。
盛大な拍手が講堂内に響く。
『黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る』
『黄鶴楼で孟浩然が広陵に行くのを見送る。 古くからの友人は西方の地にある黄鶴楼に別れを告げ、花かすみの立つ春三月、揚州へと(船に乗って)下っていく。帆を張った舟の遠い姿は深い青空の彼方に消え、あとはただ長江が空の果てまで流れるのを見るばかりである』
2つ目が終わったようだ。
拍手が講堂内に再び響く。
『春望』
『都が破壊されても山河は残っており、都に春が巡ってきて草や木が生い茂っている。
時代を感じては花をみて涙を流し、別れを恨んでは鳥の鳴き声を聞いていても心が痛む。
戦乱が3ヶ月続いている中で、家族からの手紙は大金と同じぐらい貴重だ。
頭の白髪は頭を掻くたびに短くなって、冠をとめておく簪さえもつけれなくなろうとしている』
3つめも無事に終わり、牡丹の会の発表が終わった。
続いて韓国・朝鮮にルーツを持つ子達が所属しているアプロの会の発表があった。
アプロとは韓国語で「前へ」という意味らしい。
1.2.3.4年生は劇、5.6年生は太鼓の演奏をやるみたいだ。
僕が小学生の頃はテコンドーの演武とかもやってた気がするんだけどなくなったのかな。
劇の内容は、友達が居なくて泣いているお姫様を笑わせることが出来たものに褒美をやるという内容だ。
「むかしむかしあるところに……」
劇は順調に進み見事お姫様に友達ができたところで緞帳が降りた。
次は5.6年の太鼓の演奏だったな。
緞帳が上がり、軽い説明の後演奏が始まった。
4分ほどの演奏が終わり、最後に会歌(?)のアプロの合唱で締めるようだ。
(中の人は6年間聞かされ続けた結果完璧に歌えるようになってしまった)
アプロの会の児童たちが歌い終えると、盛大な拍手が湧き起こった。
確か最後はグローバルクラスだったな。
グローバルクラスは今年新しく出来た国際クラブのようだ。
最後は10か国語で歌う数え歌で発表会は終わりのようだ。
卒業して6年が経つけどあまり変わってないことに驚いたけどどこか安心した。
と言ってもあまり明白に変わられても困るけどね。
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