真谷優の大学留学記57「夏祭り当日2」
サンザシの甘酸っぱさがクセになり、気づいたら全部食べ切っていた。サンザシ自体も大きめだったが、そんなこともお構いなしに食べきれてしまった。「サンザシってあんまり見ない果物だけど、どこで売ってるんだろ」気になった僕は調べてみることにした。えっ普通にスーパーで売ってるのか……。あんまり見かけたことないけど、専門店で買った方が確実そうだな。
ふと響の方を見ると、パリパリと快音を響かせながらいちご飴を食べていた。飴食べてる姿すら可愛いとか本当に響は最強すぎるよ。「優どうしたの?私の顔になにかついてる?」 「えっ!?いやなんでもないよ」「そう?ならいいけど……」あぁほんとに響は可愛すぎる。可愛すぎて、好きの気持ちが止まらないよ。
その綺麗なな横顔に何度見とれたことか。
浴衣もよく見れば紺色の生地に猫と菊の花と紫陽花があしらわれていた。
浴衣すら可愛いとか本当に好き。好きすぎて好きの気持ちを何個並べても止まらないよ。
「ねぇ響その浴衣ってレンタルなの?」
「これ?実は親戚のいとこから貰ったんだ」
響のいとこありがとう。こんな可愛い浴衣を譲ってくれて。だめだ響のことになると、止まらなくなっている。響に出会った日から僕の毎日が本当に恋愛小説のように変わったんだから。
響と一緒に参道を歩いていると、ちょうどいい木陰を見つけた。「響、あそこにちょっと座れる場所あるし少し休まない?」「うん、私もちょっと疲れてきたから休みたいところ」タンフールーのついでに買ったサイダーを響に渡し、疲れきった体に炭酸を流し込んだ。強烈な炭酸とレモンライムの味が体にしみ渡る。休憩もできたところで、他の屋台などを見て回ることにした。
響と屋台巡りをしているとカラオケ屋台なる屋台があった。しかも結構賑わっている。聞くのは好きだけど、歌うとなると話は別だ。まぁ聞くだけならいいだろう。聴衆も結構居るみたいだし。指名されることはないだろうと高を括っていたら、まさかの響が指名された。
何歌うんだろうと期待していたら、今流行りの6人組アーティストの恋愛ソングだった。しかも何故か振り付けも完璧だった。「どうだった?」万雷の拍手の中、ステージから響が戻ってきた。「可愛すぎて倒れるところだった」「もう大袈裟に褒めすぎ。 でもありがとう」あぁなんで響はこんなにも可愛いんだ??いくら考えても答えは出ない。ふと空を見上げるといつの間にか夜になっていた。スマホで時間を確認すると夜10時に差しかかるころだった。
「響、もう夜も遅いし今日は帰らない?」「うん、私も疲れてきてちょうど帰りたいところ」「それじゃ、一緒に帰ろっか」「うん」参道を引き返し、鳥居を背にして帰路に着く。「こうして二人で一緒に帰るのはなんだか久しぶりな気がするな」「そうだね、清巌にいた時は毎日一緒に帰ってたね」高校時代の思い出話や響の周りの近況話に花を咲かせていると、響の家の前に着いた。「今日はありがとうね優」「こちらこそありがとう響」「それじゃまた明日ね」「うん」響が玄関のドアを開けて中に入っていった。それを見届けてから、僕も帰路に着く。
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