綾瀬さんと真谷くん27「夏風邪」
今日は優の家で勉強会です。優の家に行くのは初めてなので楽しみです。
10分ほど歩くと優の家が見えてきました。インターホンを押すと、優の兄が出てきました。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
「優は2階の部屋におると思うから」
「ありがとうございます」
階段をあがり、優の部屋の前に立ちます。ドアをノックして声をかけます
「優ー来ましたよー」
ですが中から反応がありません。どうしたのでしょうか。
「失礼しまーす」
小声で言いながらドアを開けると、優が倒れていました。
「優、大丈夫ですか⁈」
優に駆け寄り、呼びかけます。ですが反応がありません。どうしたらいいんでしょうか………
「優、優、しっかりしてください! 聞こえてますか!」
揺すってみますが目を覚ます気配はありません。熱も高いですし、息も苦しそうでいつ何があってもおかしくないような気がします。よく見れば寝巻きのまま、ボタンがいくつか外れていることから、おそらく着替えをしようとした時に倒れたのだと推測できますが、とすればどれくらいの間ここにこうして倒れていたのでしょう。
「ちょ、だ、誰か!」
誰か呼ばないと、そう思って階段を走って降ります。
「おぉ、危ないじゃないか、どうした、優に何かされたか」
お兄さんに会えました。
「い、いや、ゆ、優くんが」
「優がどうした?」
「へ、部屋で倒れてて、熱があって、苦しそうでっ!」
余裕な様子のお兄さんに苛立ってパシリと叩いて抗議します。
「それはまずい」
血相を変えたお兄さんが私を置いてすっ飛んでいってしまいました。
優大丈夫なんでしょうか………しばらくするとお兄さんが降りてきました。
「優くんは大丈夫なんでしょうか?」
「多分夏風邪だと思う。まったく体調悪いなら言ってくれてもいいのに………」
「私が優を見ときますので、お兄さんは必要なものを買ってきてください」
「そうかじゃあよろしく」
そういうとお兄さんは、買い出しに出かけていきました。私も優くんの様子を見に行くとしますか。階段を上り、優の部屋に入ります。部屋に入るとベッドで横たわっている優がいました。
「優、どう? 寒い? 暑い? 苦しくない?」
そう問いかけても答えは返ってきません。
「ん……?ひびき……?」
優くんが目を覚ましてくれました。優くんが起き上がろうとしましたが、私は思わず泣いてしまいました。
「ゆう、くん……無理して起き上がらなくても大丈夫です。倒れてたんですから」
「ちょ、泣かないでよ……」
掠れた声で、オロオロと優くんが言ってきます。
「あんまり喋らない方がいいと思います」
勉強会のはずが優くんの看病をすることになってしまいましたが、優と一緒に居ることが出来たので良しとしましょう。