綾瀬さんと真谷くん1「綾瀬さんと僕」
僕には好きな人がいる。今日も麗しい綾瀬響さんだ。さらりとした長い髪の毛が陽光を反射して青みがかって、まるで物語のお姫様のように艶めく。その髪を耳にかければきらりときらめく華奢なイヤーカフ。校則が緩いから邪魔にならなければアクセサリーを身につけてもOKで正解だ。可愛らしさが際立っている。
何も見た目だけじゃない。中身だって素晴らしい。学級委員長を務められる誠実な人柄、そして誰に対しても優しく接する姿。真面目な彼女はとてもいい人だ。
以上と他いくつかの個人的理由を加味して、僕は彼女に告白しよう、と決めた。勝算、そんなものはない。けど、早く告白しないと誰かと付き合ってしまうかもしれない。ダメでもともと、うまくいったらそれでよし、と覚悟を決めたわけだ。
放課後、お願いして教室に残ってもらった。西日が刺す間取りなので夕日に響さんの髪は赤みがかった黒に輝く。つくづく綺麗な人だ。
「お話って? どうしたの?」
声も可愛いんだよなぁ、と一瞬現実逃避しそうになったけど、それじゃ意味がない。
「あの、綾瀬さん、僕と、付き合ってくれませんか?」
無理、と言われるのを覚悟して数秒。沈黙が流れる。心臓が張り裂けんばかりに速鐘を打つ。早まるなよ、勝手に破裂するのはいいけど、それは流石に無理、と言われた後でいい。
「……よろしくお願いします」
さぁっと風がふく。少女漫画か、とまた現実逃避しそうになった。まさかこんなにすんなりOKをもらえるとは思わなかった。
夕陽が差し込む中、僕と綾瀬さんは最終下校のアナウンスが流れるまで見つめあっていた。