ビジネスモデル変革と化粧品事業 <#2016.4.27 業界向けコラム&beaute d'Or専門家コラム更新記事>

美容×ビジネスモデル

数年前より、様々な業界でビジネスモデル変革が行われて、ビジネスモデルという言葉が定着してきました。
化粧品・美容業界だけを見ていると、新規参入は珍しくないものではありますが、幅広い視点で見ると、大きく変革を遂げた富士フイルムはとても注目すべき点がたくさんあります。

富士フィルムといえば、写真(イメージング)事業がメインだったところ。しかし、もはやフィルムの会社ではないとも言われています。デジタル化などによるフィルム事業の衰退により、この技術を駆使して様々な分野への挑戦が行われてきました。実は化粧品参入は意外と最近なことで、現在はそれを基盤に、医療、LCD、半導体、ITまでへと変容しています。


富士フィルムの化粧品事業への本格参入は2007年ごろ。CMで有名女優を起用したブランドが話題となりました。
化粧品事業の発端となるのが、「アスタキサンチン」という成分の登場です。

当時、化粧品業界では、「ヒアルロン酸」や「コラーゲン」の2大ヒット成分が謳歌している時代。この成分が入っていれば必ず売れるという暗黙の了解がありました。
その次なる成分として、富士フィルムが研究していたのが「アスタキサンチン」です。
この成分を、フィルム技術を駆使してナノ化し、はじめは健食が発売されました。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、その当時、ヒアルロン酸やコラーゲンほどヒットしなかったどころか、市場的にあまり日の目を見る機会がなかったように思います。

アスタキサンチンのほかに、コラーゲン(アミノ酸)の研究も独自に行い、これらを駆使して化粧品ブランドが発売されます。
それと同時並行的に、バイオ分野への参入を遂げ、コラーゲンを中心とした研究試薬開発にも力を入れるようになります。
そしてお馴染みの化粧品ブランドが出てきたということです。
このほか、医療機器などにも力を入れ、映像・現像の世界からヘルスケア産業全体へも軸を移行しつつあります。

また、大手飲料メーカーとのコラボ事業として、コラーゲン飲料も商品化。最近ではファンデーションなどにまでその製品群を広げています。


化粧品業界単体で見ると、「あの富士フィルムが?!」とその当時注目されましたが、異分野から独自開発を果たしての参入というのは珍しいものです。また、広い視点で見ると、フィルムのナノ技術が化粧品開発に繋がったというのもすごいことです。
それだけでなく、ビジネスモデル変革という大きな軸でみると、化粧品はその一分野に過ぎないことがわかります。

富士フィルムの化粧品事業参入は、化粧品業界に新しいビジネスモデル変革をもたらしました。
現在は、その当時言われていたようなビジネスモデル変革はあまり言われなくなりましたが、業界内外を見てもイノベーションが注目されています。単なるビジネスモデル変革ではなく、そこにイノベーションの視点が求められます。これこそが日本の産業発展へとつながるのではないかと考えます。

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