ダメでもスキ17~浮気者の人知れぬ苦労
誕生日やクリスマス、年末年始。ヤリチンにはいくつか、困難なイベントが待ち受けている。数ある彼女の中からどの女性と過ごすか、究極の選択が求められるのである。
夫(※注:連載当時。現在は離婚済み)の仕事はラブホテルの清掃であり、祝祭日が稼ぎ時で、イベントごとの日はことごとく仕事である、と彼は言っていた(というか一年くらい、休みが一日もないと言い張っていた)。
とあるクリスマス、彼は23日から連勤が続き帰ってきたのは26日の朝方だった。まあ繁忙期であろうし、仕方ない。今さらクリスマスでもないが、なんとなく雰囲気だけでも味わうか、と私は夫に訊ねた。
「ピザ取るけど種類は何がいい?」
「……いや、ピザはいいかな……」
「なんで?あなた、ピザ大好物じゃない」
「……いや、ごめん、どうかピザは勘弁してください」
不思議に思ってよくよく聞くと、クリスマスイブから3件の女の部屋を回った夫は、そのどの家でも宅配ピザを食べさせられて来たのだという。
「あんた、やっぱ仕事って嘘だったのね!」
「いや、ほんとすみませんでした。でももう、ピザとケーキは見たくない……」
女たらしの女性への気遣いというのも大変なものだなあと変に感心した私だった。
ヤリチンの苦労は耐えない。
続く
※こちらはスポーツニッポンアダルト面にて水曜日に連載中の拙コラム「ダメでもスキ♡」の再録です。