シェア
深志美由紀
2018年2月22日 13:01
まずその日最悪だったのは、街で偶然岡内博之に寄り添う島崎麻衣を見てしまったことだ。 「お前、最近雛香ちゃんのとこに顔出してやってんのか」 ある日の夕食時、思い出したように父が言った。 雛香。久々に聞いた名前だ。私は咄嗟に眉間が歪むのを無理に抑えて、ああ、そういえば、と無邪気さを装った。「うーん、そういえば、最近はあんまし」「まったく冷たい娘だね、お前って奴は。昔はあんなに仲が良かっ
2018年2月14日 16:47
黒板に羅列する方程式。 数学の相良先生が、長い方程式を黒板にすらすらと書いていく。 ゆびさき。 私の視線は、その、白いチョークを持つ指先に釘付けになる。男性特有の、節くれ立った、けれど繊細な細長い指。 その中指が私の中に埋まる瞬間を想像して、私はうっとりと目を閉じた。 先生の白い肌。きまじめな、冷たい印象の瞳。薄い唇。私はそのからだじゅうすべてに、あまねくキスを降らせる場面を想像する。
2018年2月12日 16:35
駅前を抜けたら線路の横をしばらく走る。駐輪場に自転車を停めて校門に入ると、十メートルほど前を若宮徹が歩いているのが見えた。私は駆け寄って行って、その肩をぽんと叩く。「おはよー」徹は一瞬驚いた顔をして、それからすぐにいつもの優しい笑顔になった。「おはよう須川、朝から元気だなぁ」「まーね。徹は元気ないね」「ん、俺はテイケツアツ」「ふーん」寝起きの悪い人はよく低血圧と言うけれど、本当に
2018年2月10日 12:20
繋がった場所から、溶け合ってしまうようだった。私は唇を噛み締める。堪え切れなくて、切ないため息が漏れた。身体の奥の、いちばん深いところを熱い肉杭が貫く。ずしんとした衝撃と、甘美な快感。私の欠けた部分へぴたりとはまり込んで少し大きい。それが恭次の性器だった。ほんの僅か、私を無理やり押し開くその熱がいとおしい。身体の奥深くから熱いものが湧き溢れてきて、繋がった部分を溶かしてしまう。幾度も突き上