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戦時のウクライナ、ひとり旅 13・最終回 〜 リヴィウ、旅の終わりと救われた動物たち 〜

ウクライナの旅ももう終わろうとしている。
最後に訪れるのは、最西端の都市、リヴィウ。ここから国境を超えてポーランドまであっというまの距離だ。これまで訪れたキーウ(キエフ)、ハルキウ、クラマトルスクなど東部の町に比べると、たいへんヨーロッパ風だ。建物を見ていると、自分は今ハンガリーにでも居るような気がしてくる。

リヴィウ駅に到着後、駅に近いホテルの部屋を取り、少し休んでから夕方近くにリヴィウの旧市街を散策してみる。歴史を感じる大きな建物だが、なるほどこの辺はユネスコ世界遺産に登録されているという。古く、壁が剥がれたような建物もあるが、逆にそれが東欧らしさを感じさせてくれる。
夕食はウクライナ料理を食べたいと思っていたが見つからず、結局ラーメン屋に入ってしまう。旅が終わりに近づくと、気が緩むのかもしれない。

リヴィウの街並みは美しい

ウクライナ東部では英語が通じにくかったが、ここリヴィウではラーメン屋の若いウェイトレスでも上手い英語でコミュニケーションしてくれる。ウクライナ東部は、ロシア語とウクライナ語のバイリンガルが普通だが、西部は違うようだ。一つの国ではあるが、ポーランド、ロシア、モルドバ、ルーマニア、ベラルーシ、ハンガリー、スロバキアと異なる国に囲まれている。言語や文化的な面でみると、一国でもいろいろな顔を持っているようだ。

リヴィウでの1日めは少しゆっくりできたが、2日めは最後の目的地、「ドミウカ」を訪れてみる。これはリヴィウ東部の森林公園の中にある、動物たちの保護施設だ。ニュースで見た人も多いかと思うが、ロシアによる侵略のあとの避難時、ペットを同伴できたのはラッキーなほうたっだ。多くの人々は、犬や猫をあとに残して急いで避難することになってしまった。数日で帰れるのでは、と期待していたのかもしれない。または、恐ろしい爆撃の音で犬や猫が逃げ出したかもしれない。爆撃やその後の飢えなどで死んでしまったペットや家畜も多い。

ポーランドやドイツなどへ避難するのにペットを連れて行けない人々は、この保護施設ドミウカに頼ることになった。とはいっても、ドミウカは5年前に野生生物の保護のために設立された施設だった。そのため、ここにはキツネやヤマアラシなどの野生の動物もいる。しかし、今いちばん多いのは猫と犬で、しかし中にはコウノトリやアリゲーター、馬やロバ、サーカスの動物もいる。

動物たちの世話をするボランディアたち
東部で保護されたロバ、名前は「Bro」(兄ちゃん)

ボランディアの若い女性、ヴィクトリアが「ドミウカ」を案内してくれる。
「ウクライナ東部で激しく攻撃を受けたバフムートの動物たちが一番多いですね」
「そこ、棚の上に座っている大きくて黄色い猫は、ガーフィールドという名前です」

猫のガーフィールド。猫たちのために施設の内装が良くなった

ボニーという名前の小型犬は、爆撃で後ろ足にひどい怪我を負ったという。獣医は安楽死を勧めたが、このドミウカの支援をする人物がボニーのためにギプスを発注してくれ、これを使って回復に向かっている。近所の少年がボランディアとして毎日のようにボニーを散歩に連れて行ってくれる。

一度は安楽死されかけたボニーが散歩を楽しめるようになった

他の犬たちもボランディアの皆さんがよく面倒を見てくれている。飼い主のおじいさんが爆撃で死んでしまい、彼に飼われていた鳩たちはここで世話されている。爆撃時に腰に棒が刺さってしまい、生きながら腐乱が始まっていたハスキー犬は、ここで脚を切断されたものの回復に向かっている。

脚を失ったハスキー

何匹も保護されているキツネは、狩りのターゲット用に繁殖されたり、毛皮のために繁殖されたという。戦争は悲惨だとしか言いようがないが、彼ら・彼女らにとっては、戦争のせいで楽しみのために撃たれたり、殺されて毛皮をむしられることがなくなった。

もし気になる方がいたら、この施設「ドミウカ」のサイトにアクセスしてほしい。そして、寄付をすることで彼らの動物福祉活動を支援してほしい。お願いします。
https://domivka-tvaryn.com/en/

ここドミウカで、わずかではあるがポジティブなニュースをウクライナの旅の最後に聞けた。

最後は、ウクライナ鉄道で沈みかけた太陽を見ながら(旅の終わりになんとシンボリックだろうか)ポーランド最東端の町、プシェムィシルに向かう。戦争が始まってから、この駅にいったいどれだけの難民が行き来しただろう。この美しい19世紀の駅でひたすら一晩を過ごしたあと(背もたれもないベンチに座り、出窓に背もたれて寝る)、ベルリン行きの特急に乗り、そこからは夜行バスでオランダまで。

キーウ方面に出発前の列車。兵士は戦場に向かう。駅でこのようなドラマチックなシーンをよく見かける。
ウクライナとポーランドの国境を超えるころ、日没になる


短いながらもあれだけ心を締め付けられた旅の終わりに、安全に、あっさりと、帰宅してしまった。

もしかすると、今年も再びウクライナに行くことがあるかもしれない。
その時まで、あの国の状況はどう変化するのだろうか。

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