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MIMIZUQ インタビュー

たくさんのライヴが、新型コロナウイルスの感染拡大により
延期、そして中止となっている。
どのバンドにとっても苦渋の決断であることに違いはないが、
大きな岐路を迎えていたバンドにとってその苦しみは想像しがたい。
6月でヴォーカル・TAMAが脱退したMIMIZUQにとってもそうだった。
けれども彼らは前を向く。まずは3人のまま、
9月29日にTALK LIVE『避密の森』で新たなスタートを切る。
待っていたであろうファンに、彼らの声を届けたい。
そして、また森に集まろう。

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■本来であれば、MIMIZUQとしては6月のライヴで一区切りつくはずだったんですよね。
seek:そうですね。でも、残念ながら節目さえできなくて。どうするのかいろんな可能性は考えてたんですけど、こんな状態で活動を止めざるをえなくなったんです。この2年間で作り上げてきたものはTAMAさんとやってきたものなので、ちゃんとライヴでお別れすることを望んではいたんですけど、それが難しい状況になったから。残念な形になってしまったというのが正直なところですね。

AYA:しかたないですね…。やれるもんならやりたかったですけど、TAMAさんの事情もあるし、世間の事情もあるし。

poco:6月にやらなかったとして、じゃあ、いつならやれんねんっていうことにもなるし。

■単に延期というわけにもいかないですもんね。
seek:普通に継続されてるバンドさんですら、状況が不安定になっていく中でどうしていくべきか話し合ってるのに、それに加えて活動が止まるわけだから。そら難しいなって。それでも、少しでもみんなに楽しんでもらえるものを残しておきたくて、「Secret Parade」を配信リリースしたんです。

■それからは急いで何かするよりは、ちょっと落ち着いて考えようという気持ちだったんですか。
seek:いろいろ経験してきた三人ではあるので(苦笑)。

AYA:焦るのが一番よくないとずっと思ってましたね。

seek:ほんまはいろんな手段を使ってでも、3人でどうする?って話したい気持ちはものすごくあったんやけど、そうしたとしても“どうすんねん?”っていうことばっかりが出てきそうな状況ではあったから。そこはすごく難しかったですね。それに夏以降気持ちを切り替えようとして、これからヴォーカルを誘って第二期を作っていこうって考えようとしたんですけど、なかなかこの状況で“バンドやらへん?”っていう一言を言うきっかけがないなぁって(苦笑)。

AYA:結成してもライヴできひんしね。

poco:しかも、既にあるバンドに入ってもらってやしな。

seek:今は、新しいヴォーカルはどういう方がいいかなっていうイメージ像を、3人でうっすらと話したりはしてるんですけど。でも、メンバーが入りました、ツアーを組もうぜっていう情勢でもないし、お披露目のライヴで、ファンの方がおめでとうも言えないというスタートは厳しいかなとも思うし。でも、自分たちにとってはしっかり考える時間やし、いい期間やとポジティブに考えたほうがいいのかなと思いますね。

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■いつになるかはともかく、MIMIZUQが進むことについては迷いはなかったわけですか。
seek:迷いはなかったですね。3人でいるということ自体は僕らは別にすごく居心地がいいから。ファンの人からすると、MIMIZUQは完全に止まってしまってる状態なんで、動かさないといけないんじゃないかという気持ちは常にありましたね。だから、ヴォーカルがいない状態であることとか、俺らがこうやって話してて楽しいぜっていう空気感もひっくるめて、三人でできることから始めて、その流れの中でヴォーカルさんに加入していただくとか、そういうところまで見せていくという活動でもええんちゃうかなと思ってますね。

逆に今度の3人でのイベントから、コンスタントにイベントを続けていけたらいいなと思ってるんです。MIMIZUQというあの人たちは休んでるわけじゃないんだぜっていうのを伝えるためにも、このたび始めるに至りました。

■9月29日のTALK EVENTですね。
seek:ほかのバンドさんもそうですけど、今はライヴという活動だけじゃなくなってきたじゃないですか。おしゃべりなのか、配信を使って音楽を届けるのか、いろんなことをみんなが始めてるから。そう思うと、メンバーがマイナスになっているから動けない、ということもない状況なのかなと思ったりもして。3人でまずは始められたらいいのかなと思ってます。何しますか? 何しましょ?

AYA & poco:(笑)

■皆さん、歌も歌うんですか。
AYA:それはおまけぐらいに捉えてもらえれば。

poco:いやいや、メインディッシュでしょ(笑)。

seek:バンドを作っていく過程も見ていただけたらいいですよね。メンバーそれぞれ新曲も作っていたりはするので。デモ段階から、それを積み上げていく過程も見せたり?

poco:今までやったらお蔵入りになってたようなデモもみんなで聴く企画とか。

seek:どういう形でMIMIZUQが作られていっているのか、お客さんにも見て楽しんでもらえたらなと思ってます。

■何が飛び出すか楽しみですね。
poco:みんなで集まる森っていう、そういう架空のものがあるよということにできたらいいなって今は思ってますね。TALK EVENTですけど、そこは確実に森だったなと思ってもらえるようにしたいです。

三人それぞれの過ごし方を経て思ったこと

■春からライヴができない状況、さらに自粛期間があったわけですけど、それぞれMIMIZUQ以外の音楽活動もある中、どんな風に過ごしてたんですか。
AYA:僕に関しては何もなかったですね。Psycho le Cemuのオンラインライヴがあったぐらいで。それまでは自宅作業ばっかりでしたね。

poco:ミュージシャンとして生きてる人は全員、3月から半年ぐらいずっとダメージをくらい続けてる日々だったんじゃないですかね。配信ライヴもやったし、仕事でもあったけど、ただ抗いたかったっていうだけですよね。もとからそれをやりたかったわけじゃないし。

seek:ミュージシャンであり、アーティストであり、そこは変わってないと思うんですけど、バンドマンという点で言うと、改めてバンドって機材車の中で話を進めることが多いんやなって感じましたね。Zoomでは、あの感じは出せへんなって。みんなでハイエースで移動しながら、“次、どないすんの?”、“あれ、おもろいな”って言ってる会話は、Zoomではできひん。複数で話をする以上、Zoomで会議やってなるんやけど。

AYA:会議が決まって、URLが送られてきて、10時にデスクの前に座って。会議が始まるまでの待機時間が何とも言えなかったですね。

seek:バンドを作るという意味では、この方法は違うなっていう違和感みたいなのは感じたかな。

poco:それに、ツアーで会話がなくても、ライヴをしていくうちにズレてたとこが直って合っていくというか、そういうのがあるよね。バンドって密なもんなんですよね。密であるべきもんですよね。

■バンド以外にも人に会う機会が減ったりとかもあったと思うんですけど。生活はどうでした?
seek:変わりましたよね。

AYA:ん? 

■AYAさんは変わってないんですか。
AYA:もとから家から出るタイプじゃないし。やってることは変わってないな。

poco:緊急事態宣言言われても、

AYA:うん、いつもと一緒やなって。もとから人に会うタイプじゃないし、家でコソコソやってますよ。

■家にいる時間はみなさん増えたと思うんですけど。
poco:めちゃめちゃ増えましたね。今でもまだコロナ以前の比じゃないぐらい、家にいることが多いですね。でも、じゃあこの間に曲をいっぱい書くかっていうことにもならず。本当に嵐が過ぎるのを待つしかないですよね。演劇とコンサートの仕事を両方していて、両方潰れたから。仕事がなくなるけど、いつからあるかもわからないし、未だにわからないですし。

seek:最近、ようやっと人に会うようになって、メンバーも苦しんでたんやな、俺だけじゃなかったんやなっていうのがわかりましたね。逆にこの仕事じゃない、会社員の一般の人としゃべったときの温度差もすげえなって思ったかな。もう普通に働いてんでって言われて。ええのか悪いのかわからないですけど、人と話して気づくことがやっと最近出て来たかなと思います。

poco:人としゃべるってすごく大事やし、生きてる気がするよな。

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seek:状況自体は変わってないですけど、俺だけじゃないんやなって思うだけでも楽になったところもあるかな。一歩でも進まなあかんと思って進むんやけど、進んだことがお客さんにとっての正解だったわけではないことも結構経験したんですよね。それを突きつけられてしんどいっていうことの繰り返しみたいな。

この時期にどんどんお客さんの気持ちが離れていくというか、バンドのない生活にも慣れていかはると思ったし。本当はお客さんも慣れたくないんやろうし、ライヴを見たいんやけど、見れないのにその情報がくること自体が苦しいからちょっと離れてみようということやと思うんです。だから、ライヴができない中でその気持ちを埋めようといろいろしたけど、しんどいなって思うことはありましたね。

振り返る時間はいっぱいあったなと思いますね。振り返るというか、自分とは何ぞやって考えるというか。俺はどうしたいんやろ、何がしたいんやろ、って考えて。

poco:わかる。

seek:僕は途中から、何でもやろ、に変われたんです。やってみて失敗することも多かったですけど、やってよかったなと思いますね。同じバンドでありながら、俺とAYA君は表に出る時間で言うと、すごく差があると思う。

AYA:僕はツイキャスとか苦手なんでね。真逆のとこいってるな。

■AYAさんも、自分は何がしたいのかとか考えたりしましたか。
AYA:シンプルにモノを作りたいなと思いましたね。でも、これを今バンドに言っても、事務所もあるし、予算も出えへんから、じゃあ自分で作れるようになろうと思って、エンジニア的なこととかデザインとかを勉強しようと思って、3月からずっとやってます。個人としては出せずにいるんですけど、今修業中です。

■迷いがないというか、やりたいことを追求する時間だったんですね。
AYA:もしかすると、音楽とビジネスが離れたかもしれないですね、僕にとって。今は楽しいからやってるだけかもしれないです。楽しんでやろうという、すごくシンプルなところに答えがいったから。音楽は楽しいです。それが一番よかったですね。

人前で演奏し、演奏を生で聴く。
いつかまた来るその日をめざして。

■今日はこうやってようやく対面でも取材できましたけど、バンドはリハーサルもできなくて本当に大変だったでしょうね。
seek:バンドマンにとっては試練の時期でしたね。一時期はスタジオすら入れんかったし、その中で何ができるんだって考えて、オンラインでやって。そしたら冷静にお客さんに音楽を聴かれてしまう状態のところに、リハに入ってない人たちの演奏が流れるという地獄みたいな状況になって(苦笑)。

poco:悲惨やね。

seek:今のこの音で判断せんといてって思うけど。あれはバンドマンにとって悲惨でしたね。

AYA:演奏が丸裸ですからね。

poco:元カシオペアの向谷さんも言ってた。一番危惧してるのは、ミュージシャンが全員下手になることやって。お客さんの前で本番をやることを繰り返してるのが一番よかったのに、それを半年もやってなかったら、プロですっていきなりステージに上がってもできないって、プロの人でも危惧してるって。いくら家で弾く時間があっても違うから。

AYA:現場は違うんやね。

poco:無観客で配信とかしてもそのきらめきは出ないって言ってはりましたね。それを聞いたときに僕ちょっと安心したというか。何十年音楽の第一線にいる人がやばいって言ってるのがそこなんですよね。人前でできないことは、平等にみんな全員ツライんですよね。

■人前で演奏するということが特別なんですね。
seek:この間、アコースティックライヴで初めてお客さんを入れる形でやらせてもらって、違和感なくすっとやれたし、お客さんがいてくれたことによって空気感がこんなに違うんだって感じれましたね。目の前にいる人に向けて、もちろん配信を見てる人への気持ちもあるんですけど、ここにいるというだけで会場の中の空気感が変わるんです。それを改めて感じれたことが大きかったかな。だからこそ、少しずつまずはみんなで集まって何かをやれる楽しさを一番に感じようと思ってます。

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poco:ライヴをやってる、やってもいいんだっていう空気を作っていかないとね。ライヴって素晴らしいことで、それを人前で見てもらうのはもっと素晴らしいことっていうのを、ライヴをやる事実によって作っていかないと。中止になった事実が多すぎるから、数を重ねていくしかないですね。バンドと別の話ですけど、演劇業界はお客さんが声を出さないから、100%お客さんを入れてよくなったんですね。

AYA:映画館もですよね。

poco:そう。知り合いのこところを見に行ったら、ステージで目の前で生身の人間が歌って踊ってるわけですよね。そういう僕たちが好きで見てたものをすごいって生で見る有難みを改めて感じましたね。そこで歌ってる歌声とか、その目の力とか、やっぱり生で見るべきやと思いましたね。

seek:そういう目の前で歌ってるからこそというものがあるはずやし、俺ら自身も一番初めにライヴハウスでライヴを見たときにその感覚ってあったし、ふわっと体が数センチ浮いてるような高揚感、あれはきっとあるはずやから。そこはチャレンジしていきたい。最近ある、さあここまでできるんだから、あなた楽しんでくださいねっていう空気感もイヤなんですよ。楽しまなくちゃいけないんだっていう感じ。そうじゃなくて、皆さんが自然に安心できて楽しめるような階段をちゃんと上っていければなと思いますね。

さて、道化は何をするのか? 避密の森で目撃しよう

■残念ながらまだ通常のライヴまではちょっと時間がありますけど、まずは9月29日のTALK EVENTでステキなものを見せてください。
seek:MIMIZUQならではの面白いことも見つけられそうな気もするんでね。どういうところが伸びていくかわからないですけど。

poco:トライアンドエラーの、トライができる状況まではきたというところですかね。

seek:3人でやること自体が単純に楽しみやなっていうのがすごく大きいし、3人で、“どうする?”、“何する?”って言ってる時間もすごく楽しい。

poco:それ自体も一緒に楽しんでもらえるぐらいにね。

seek:あんまり答えを求めすぎてしまうと動けなくなってしまうかなとも思うんです。ただでさえ頭でっかちになってる状態やったので、とりあえず日程だけ決めておいてたらいいか、みたいな感じで始めたし、そんなんでええんかなって。やってみてちゃうかったら、次のときまた別のことをやってみたらいいし。

バンドとか表現するということに対しては、フットワーク軽く、行こうぜ!っていうぐらいにしておかないと、みんな本当にいなくなっちゃう感じがして。最近、それが表面化してきてる気がするんです。すごく悪い考え方をしてたら、俺らもそうなってたかもしれない。俺らは選択するときに、ええやん、やってみよのほうになったからこうなったけど。

poco:“3人でできることねえよ”って言う奴やったら終わってたでしょうね。普通に考えたらヴォーカルおらんかったら無理やけどな。でも、この3人のキャラが立ってるからいいことですね。

seek:言い方は悪いですけど、このコロナの状況やったからよかったのかもしれないし。通常のライヴを3人だけでやるんやったら厳しかったと思うけど、配信やったらやれるんちゃう、みたいに思えたところはあるかな。

■確かにそう考えると何だか嬉しくなりますね。それに9月だけではないというのがまた嬉しいです。
seek:毎月やっていこうかなと思ってるんでね。

■ここからMIMIZUQは動きます、ということですね。
seek:まだ見ぬヴォーカルさんと会いたいとも思いますし、単純にこの3人でのモノづくりが楽しいなとも思いますし。

poco:今はお家で楽しみつつ、安心してライヴに来れる状況を待っててもらえたらなと思います。

■何が見られるんでしょうね。
poco:見世物小屋みたいな。

seek:うちには道化がいてますんでね。

■トークと演奏と歌だけじゃなかったですね。
poco:MIMIZUQならではのね。

seek:まさかの道化がツイキャスが向いてないって? ビックリしましたけどね(笑)。

AYA:道化はしゃべらへんやん。

■確かに。何が見られるか楽しみにしてます。

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アプレゲール
インタビューという形を通して、アーティストがSNSなどで直接届ける言葉には乗らない“何か”を届けられたらと、コツコツがんばっています。その“何か”を受け取れた、と感じてくださったらぜひサポートをお願いします。大きな大きな励みになります。