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「明日の鐘」から『Nouvelle Vague』を振り返る

今年も流れ星はおあずけか〜。
毎年8月12〜13日頃に極大になるペルセウス座流星群。会社の夏休みとも重なり翌日のことを気にしなくてよいため、海岸に寝っ転がっては流れ星を待って夜明けを迎える、ということを2019年まではよくやっていました。
去年の夏は…多少出歩くこともできる時期でしたが、結局、画面越しの天体ショー(見出し画像はその時のものです)を眺めていました。
さて今年はというと。そもそも満月が近いから条件悪いのかーと思っていたところに台風もやってきて。関東近郊ではなかなか難しそうですね。

そんなわけで今年もマウナケアの国立天文台ライブを見たりしながら、それにしても「明日の鐘」の星空がホンットに綺麗だったな…なんて夏イベを思い返しています。一面に広がってキラキラ瞬いたドットイメージ。ドットイメージの星空は今まで何度も見てきましたが、今年は本当に息を飲む美しさで。照明でハッとさせられるシーンが幾つかあった中、特に印象に残っている場面です。翼を広げて羽ばたく鳥たちが、空を駆けていくシーンとともに。

その「明日の鐘」。この曲ではいつも12弦とガットのWネックを抱える坂崎さん。指先から紡がれる印象的なガットギターの調べに、イントロからぐんぐん世界に引き込まれていきます。

配信番組『Come on ! ALFEE !!』をご覧の方にはSeason3(21/11/14)で流れた武道館映像が記憶に新しいでしょうかね。高見沢さんがフライングでギターを弾く、あれです。クリオネ呼ばわりされていたあれ!
2004年のTravelin’ bandツアーの武道館でした。それまでにも空飛ぶ高見沢さんは目にしていましたが、あのフライングにはびびびっっっくり!したのです。本当に美しくて、神々しくて。高見沢さんが暗がりの中、ステージ上にフワッと降り立った(地上に戻ってきた)瞬間には、あぁっ!天使が地上に舞い降りた…リアルに天使が舞い降りたよ!!なんて思ったのを覚えています。

直近では2018年の夏イベ『夏ノ巻 Chateau of The Alfee』の両日。伸びやかなボーカル♪ 高見沢さんのボーカルの進化もさることながら、ドットイメージの演出も年々進化していて…初めてドットイメージが登場したのは2011年の武道館?から?でしたかね? めざましい進化と描き出されるその美しい世界観にうっとりしてしまいます。

映像で見ていると、華やかな演出についつい心奪われてしまいますが。この曲、物語を紡ぎながらも自身の内面をずっと探っていくような、自分の内面と向き合って未来を描き出していくような深い曲だと思いませんか。初めて聞いた日から大好きになった曲です。壮大なスケールのテーマも、哀愁のあるメロディーに乗るとするん♪ と入ってくる。そして聞き終わった後にもじんわりあたたかな灯が胸に残り続けるような。やっぱり高見沢さん天才!

演出面に少し話を戻すと、個人的には99年の夏、ハンマーヘッドパーク(当時はまだ新港地区ニューポートピアという表記でした)でのこの曲が強烈な印象で脳内に刻まれています。
ステージ上で流れる映像の中で揺らめくろうそくの炎。春ツアーでは中央に立っていた1本のろうそくが、夏イベでは無数のろうそくの炎になってスクリーンいっぱいに広がりました。これを見たときに、あー、あの中に私の1本もあって、いずれ必ず消えるんだな、と思ったのです。だからいろいろ言い訳したり、自分を誤魔化してして生きるのはやめよう、と。この歌の歌詞と演出が相まって、飛べないかもしれないけど飛んでみよ、とふと思ったのです。

炎がゆらゆらと揺らめく様子は、この曲を初めて聞いた97年秋ツアーの段階から見ていたはずなんですけどね。98年の夏イベでも。2年近くかかってやっと気づいた私…時間かかったねぇ。
そんなこともあって、私にとってとても大切な1曲になりました。

人は昔 空を飛べたと 風はささやき通りすぎる
飛べない翼 広げた時に 明日への鐘が鳴り響く

作詞・作曲:高見沢俊彦/編曲:THE ALFEE
ストリングスアレンジ:服部克久

さて。この曲。CD化されるよりも前にライブで発表された曲で。前述の通り97年秋ツアーから新曲として歌われていました。翌98年3月に発売された『Nouvelle Vague』に収録されて音源化を果たしますが、この間にSkirt(スカート)というガールズユニットが、高見沢さんプロデュースのもとゲームのテーマソングとして発表しており、一部ではセルフカバー曲…ということになっていたりもしますが。ま、そんなことはさておき。

『Nouvelle Vague』は98年3月に発売されたわけですが、これは東芝EMI移籍後の第一弾アルバム。25周年を翌99年に控えたタイミングでした。ヌーヴェルヴァーグ。フランス語で新しい波。英語で言うところのニューウェーブ。移籍=新たな環境の中で、21世紀に向けて新しい波を起こす、そんな決意表明のような1枚だったと記憶しています。

サウンド面では、シンセサイザーを使わず生のストリングスを多用。
90年に『THE ALFEE CLASSICS with LONDON SYNPHONY ORCHESTRA』、96年に『THE ALFEE CLASSICS II with Royal Phillharmonic Orchestraと2枚のクラシックスコラボアルバムをかの服部克久氏のアレンジで実現し、97年1月には東京国際フォーラムのこけら落とし公演として『THE ALFEE CLASSICS ~融合~』でオーケストラとのセッションを成功させた影響も大きかったのでしょう。ノーシンセサイザーで、という方向性は、先行シングル「Brave Love ~Galaxy Express 999」制作時から決めていたそうです。1作前の『LOVE』と違いを聴き比べてみるのも、また楽しみのひとつかなとも思うのですが。より厚みを感じられる贅沢な音になっているように思います。

そして歌詞、言葉の面ではそれまでになかった強さが出ているように思うのです。強固なだけではない、よりしなやかな強さ。覚悟の強さと言いましょうか。一番驚いたのは。

例えば『LOVE』収録の「EVERYBODY NEEDS LOVE GENERATION」では

涙流れたら 涙を拭いて
 涙に負けずに 立ち上がれ!

作詞・作曲:高見沢俊彦

と歌っています。当時の私は、これが高見沢俊彦の世界だと思っていました。涙に負けるな、泣いてないで前を向こう!的な。パッと思い浮かぶだけでもいろいろありませんか?
”涙を拭いて立ち上がるのさ” 然り。”涙の海に泳ぎ疲れても” 然り。”涙ぐむ余裕があるならそれだけ明日みつめよう” 然り。
それが『Nouvelle Vague』の「Pride」では

こぼれる涙に挫けそうな時は
 泣くだけ泣けばいい

作詞・作曲:高見沢俊彦

とくるんですよね。この不意打ちに、初めて聞いた時は涙が溢れて止まりませんでした。あぁ、泣いてもいいんだ…と。その上で、

だから今を生きるその誇りを胸に掲げ
迷わず信じた道を真っ直ぐに 君よ闘え
ひとり・・・君よ闘え

と。この曲以外でも、柔軟に、かつ凛とした強さで立ち向かっていく覚悟と意志、勢いのようなものが増したように感じるのです。
❇︎意見には個人差があります(笑)

余談ですが、「Pride」に関してはアルバム完成時のインタビューで高見沢さん、

これは曲ができあがった瞬間に、桜井に「これはお前にかかってるからな」って言い含めた

と笑っておられます。桜井さんも、

見てたテレビをいきなり止められて「これ頼むぞ!」ってさ。今までそんなことなかったから、家帰ってから、あれはどういう意味なんだろう?って悩んじゃって…

と。そんなやりとりからの、あの素晴らしいボーカルなのですね。ツラい時をずっとずっと支えてくれた、支え続けてくれた曲。この曲のおかげで今があると言っても過言ではない、大事な大事な1曲です。

また、変拍子の嵐〜♪ なアルバムタイトルチューン「Nouvelle Vague」、12弦を4回重ねた上にマンドリンまで弾いたという「Sister of The Rainbow」に、ウルトラマンあり、マラソンあり、 "未来はけして君を裏切らない" 銀河鉄道999あり。プログレからハウスまで。
ギターアンサンブルとコーラスと生のストリングスが目一杯詰まった『Nouvelle Vague』今一度、聞き直してみませんか。

加えて。服部先生と共に作ったCLASSICSシリーズの3枚目『THE ALFEE CLASSICS Ⅲ with Royal Phillharmonic Orchestra』では冒頭の3曲が『Nouvelle Vague』からのナンバーになっています。
中でもスペインの作曲家ロドリーゴの「我心のアランフェス」からの「明日の鐘」が絶品!で。もともとアランフェス協奏曲が大好きだったせいもありますが。美しすぎて切なくて…泣けます…

CLASSICSシリーズも名盤なので、クラシックに抵抗がない方はぜひ聞いてみてください!


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