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妄想劇場 7話

第7話「絡み合う糸」

「ミユキー!ほんまに俺は何もしてへんねん!あの日、西田さんと電話してたんは事実や。俺に話あるからて…。せやけどあの日、オフィス行ったら西田さん、もう死んではってんや!!嘘やない、ほんまやー!!」必死に訴える鶴瓶の表情は、あながち嘘では無さそうだった。
「じゃあ何で…何でその時すぐ警察に連絡しなかったの?」涙声になりながらミユキは訴えた。
「……怖かってんや…お前が…俺の元から去ってくんが。ジョーのとこ行くんが…」
鶴瓶は力なくうなだれた。
「取りあえず、この件に関して署までご同行願います。」そう言って鶴瓶はパトカーに連行されて行った。
遠のくサイレンの音を聞きながら、ミユキはしばし呆然と立ち尽くした。
林が会釈し立ち去ろうとした次の瞬間
「あっ、あの!…林さんの付けてる香水…凄くいい香りがしますね」逸る気持ちを押さえながら、ミユキは訊ねた。
「あっ?これっすか?少し前に彼女からプレゼントされたんすよ。実は香水とか、てんで無頓着なんで俺。正直初めは付けるの躊躇ったんすけどね…」頭をかきながら、林が答えた。
「それって、何処で購入されたとか分かりますか?」少し頭を傾けながら林は考え込んだ。
「はっきりは知らないんすけど…あっ、何だったかな?確か、イル?エル?あっ、そうそう!イルエって人のオリジナルブランドらしいっすよ。」
イルエ…?それを探せば何か手がかりが見付かるのかも知れない…
不安な気持ちに襲われながら、ミユキは固く決心した。
あたしが、あたしが全てを…全てを必ず突き止めてみせる。
強く握りしめた右手は、微かに震えていた。

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