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妄想劇場 10話

第10話 「不思議な導き」

橋爪探偵事務所…
西田さんの親友…
「マスター、ありがとうございます!」
お礼を告げ、ミユキは店を後にした。
「1度、橋爪さんに会ってみるか…」
夜道を歩くミユキの足取りは、とても軽やかだった。
次の日も有給だったため、ミユキは意を決して橋爪探偵事務所を訪れた。
「ここのビル…だよね…?」
古びたビルの5階が事務所だった。
何故か、一昔前の映画を見てるような不思議な気持ちになった。
コン!コン!
ミユキがノックすると、白いスエット上下の男が元気よくドアを開けた。
「あっ、お客さんすか?どうぞ、どうぞー!」男はニコニコしながらミユキをソファーに案内した。
「えっと…今日はどんなご用件で?旦那の浮気調査?からの尾行??」身を乗り出し男がペラペラと話始めた。
「あの…橋爪さん…いらっしゃいますでしょうか?」少し遅れ気味にミユキは訊ねた。
「あっ、社長っすか?あいにく、別件で席外してるんすよね~」両掌を上に上げるジェスチャーをしながら、男が笑った。
「ちなみに…申し遅れましたが…これ、自分の名刺っす」男がミユキに名刺を渡した。
藤堂 雄太…これがこの男の名前らしい。
「みんなからはゆってぃーて呼ばれてるんで、お客さんも良かったらゆってぃーで!」首を右に傾け、ゆってぃーははにかんだ。
「あぁ…はい…」圧倒されながらミユキは話を続けた。
「橋爪さん、何時頃こちらに戻られますか?知人の事でちょっとお訊ねしたい事がありまして…」
焦る気持ちを押さえきれず、ミユキは少し早口で答えた。
「ん…と…今日は遠方に出向いてるんで、戻りがちょっと分かんないっすよね?お急ぎっすか??」予定表らしき物をながめ男が答えた。
「では、お手数おかけしますが、戻られたらこちらに連絡を頂けますでしょうか?」ミユキはメモに名前と電話番号を記した。
「了解っす!必ず伝えますね!」男は笑顔で答えた。
一礼し、ミユキは探偵事務所を後にした。
ミユキが帰ったのを確認した後、メモを見た男は事務所奥の扉に消えていった。
コン!コン!「社長、さっき社長を訪ねて来た人がいたんすけど…これ預かって…」
差し出した手にあるメモを、別の男が受け取った。
「西田…やっと訪ねて来たぞ…」男はメモを見て笑顔をこぼした。
その男こそが、橋爪探偵事務所社長、橋爪功であった。
脚本家 カザハナ

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