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妄想劇場 34話

第34話「隠された真実」
老婆に貰ったメモを手に、奥田の居場所を探した。
更地になった店からは、電車でほんの2駅程で着いた。
駅から暫く歩いていると、住宅街が連なっていた。
ミユキはその中のひとつ、一軒の大きな屋敷の前で足を止めた。
「あっ…ここだ…」
表札の名前を確認し、呼び鈴を押した。
「はい…どちら様でしょうか?」
男性の声がした。奥田だろうか?
「初めまして。駿河と申します。実は折り入って奥田さんに…」
そう言いかけた時、ガチャッ!と施錠が解錠された。
「どうぞ、中へ。」
引き込まれるように門の中に入った。
玄関に着くと奥田とおぼしき男がミユキを迎えた。
「さぁ、どうぞお入りください。」
並べられたスリッパに履き替え、居間へと案内された。
「そちらに…お座りください」
部屋の中は高級そうな家具などが並んでいた。
この革のソファーもきっとそうだろう。
「あっ…はい…失礼します」
ミユキは腰を下ろした。
「久子さんから、あながみえる事は聞いてます。」
「久子さん?」
不思議そうにするミユキに奥田は言った。
「あの女性。原さんですよ」奥田が笑った。
「彼女はうちの常連さんでね。僕が店を始めた時のお客様第1号なんです。姉みたいな存在でね…僕にとって…」
部屋中にコーヒーの良い薫りが広がった。
「あっ、失礼。コーヒー入れましたけど大丈夫でしたか?」
出しかけた時、奥田が聞いた。
「はい、大好きです。ありがとうございます。マスターの煎れるコーヒーが美味しいって、その、久子さんも…おっしゃってました」
カップを受け取りひとくち含ませた。
「良い薫りですね…」
壁にかかっている絵画もセンスが良く、全てにおいてお洒落な空間だ。
「それで、私に聞きたい事は?」
足を組み直し奥田が尋ねた。
「あっ…あの…あの実は…」
言葉がなかなか出てこずにミユキは下を向いた。
「松重の事…だよね?貴女の本当のお父さんの事も…」
ミユキは奥田の目を見つめた。
「松重は…豊は…」
そう言いかけた時、ガチャッ!とドアが開いた。
…!……?!……
ミユキはその姿を見て驚きを隠せなかった。
「パパ…!!…どうして…どうしてここへ……」
脚本家カザハナ

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