妄想劇場 33話
第33話「キーパーソン」
翌朝、ミユキは記憶を辿りカフェを探した。
が、そこだとおぼしき場所は更地になっていた。
ミユキは愕然とし、しばらく立ち尽くした。
せっかくの手がかりが…
何か分かるかもしれなかったのに…それなのに…
どれくらい経っただろう?
肩を落とし歩きだしたその時、1人の老婆が声をかけてきた。
「あなた、どなたか探してみえるの?」
「ひょっとして、ここのカフェのご主人??」
まるで手に取るかのように、ミユキの心の内を老婆が語りだした。
「あっ!そうなんです!ここの…ここにあったカフェのオーナーに会いたくて伺ったんですけど…」
苦笑いして答えた。
「ここのカフェ、常連さんが沢山いらしててね。それはそれは美味しいコーヒーをね、あたしも毎日頂いてましたの」
老婆がニコリと笑った。
「オーナーが身体を悪くされてね、みんなに惜しまれながらお辞めになったの。もう、かれこれ2~3年は経つかしら?」
老婆がおもむろに鞄に手を入れ何かを探しだした。
「確か…えっとぉ…」
赤い革の手帳をめくり、隅々まで見ていたその時
「あっ、あったあった!これね、オーナーの連絡先ね。住所と…電話番号と…」
手帳にスラスラと綺麗な文字が走る。
「はい、これね。1度連絡してみると良いわね。」
破ったメモをミユキに渡した。
奥田…この人に聞けば何か分かるかも…
ミユキは老婆にお礼を伝えた。
笑顔で手を振る老婆を後ろに、ミユキは歩きだした。
しばらく見送ったのち、老婆は鞄から携帯を取り出し誰かにTELをし始めた。
「あっ、もしもし?瑛二さん?あたしです、原です。あなたの言ってらした方、今しがたみえましたよ。」
どうやら、奥田にTELをしたようだ。
「ええ…ええ…そうね、うん…ええ…」
ミユキの後ろ姿を見ながら老婆が話を続けた。
「あなたに言われたようにしたわよ。ええ…ええ…それじゃあまた。」
ミユキの姿が消えたと同時に老婆はTELを終えた。
「あのお嬢さん、覚悟を持ってここに来たのね。色々と…これから色々と知ってしまうのね…」
鞄の持ち手を強く握りしめ、老婆は歩きだした。
脚本家カザハナ