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妄想劇場 35話

第35話「残酷な真実」
ドアを開けて入って来たのは、紛れもない松重だった。
驚くミユキに、松重は意を決したような表情を浮かべた。
「…いつか…いつかは…きちんと話さなければいけない…と…そう思ってたんだ…」
絞り出すような声で松重が話し始めた。
「ミユキの本当のお父さん、小日向は…あいつは…俺が…俺が…殺した……」
松重の声が震えていた。
聞きたかった言葉を、知りたかった真実を、今、この場で聞いている。
松重の口からその言葉が出た時、言い返す言葉まで用意していたはずなのに、なのに…
ミユキの目からは大粒の涙が溢れだし、頬を伝っていた。
「…で…何で…パパを…パパを…こ…こ…ろし……」
松重の寂しそうな目をミユキも寂しそうに見つめた。
「お金が…お金が必要だったんだ…だから…だから……」
松重が膝から崩れ落ちた。
下を向きうなだれた大きな背中が、とてもとても小さく見えた。
小刻みに震える肩が悲しく、寂しく見えた。
「豊…後は俺が話す…」
そう言って奥田が話し始めた。
「君の育てのママ…マリは心臓が悪くてね…」
天井を見ながら、深いため息を吐き続けた。
「その…マリの…マリの手術が急遽決まったんだ。ドナーが見つかってね…」
ミユキと豊の啜り泣く声が広い居間に広がった。
「豊が、小日向と同じ会社で働いていたのは知ってたよね?その取り引き先に…岸部がいたんだ。
岸部は、小日向が見付けた自分の不正を隠蔽しようと必死だった。小日向にも色々チラつかせたが、金にも地位にもあいつはなびかなかった。だから…」
だから?…だからって何?…
そんな事で…人を簡単に殺めらるの??…
自分の悪事を隠す為?…
「じゃ…ない…んなの…
そんなの…人間じゃない!!…人間のする事じゃないーーー!!…」
ミユキは大声て叫んだ。
「ママの為に…って…だからって…簡単に…人を殺せるなんて…ひどい…ひど……ぃぃ…」
ミユキはこの怒りをどこにぶつけていいのか分からず、ただただ流れ出る涙を止める術を見付けられずにいた。
脚本家カザハナ

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