妄想劇場 8話
第8話「違和感」
昨夜の出来事の余韻が冷めやらぬまま、ミユキは朝を迎えていた。
重い足取りのまま会社に到着した。
「ミユキ君…大丈夫かね…?」國村が声をかけた。
「あっ、はい。ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした」ミユキは深々と頭を下げた。
「私は今から取り引き先との予定があって出かけてくる。後の事は頼むよ」ミユキの肩に優しく触れ國村が笑顔を見せた。
「はい、行ってらっしゃいませ…」國村の姿が見えなくなった後、ミユキは席に着いた。
正直、頭の中は混乱しており仕事どころではない。
しかし、家に1人でいるのも辛過ぎてどうしようもなく…
色々な思いが巡って気持ちの波に襲われそうになりながら、頭を切り替えミユキは仕事に没頭した。
しばらく時間が経った頃だった。
「んっ?」
パソコンにある決済報告書に目をやった時、ふと手が止まった。
「これ…何かおかしくない?」
初めから見直してみると、当初の計上金額よりも、はるかに金額が食い違っていた。
「ねぇ、これって誰が作成したっけ?」隣席の松坂に声をかけた。
「えっと…どれですか?ちょっと失礼します…」
パソコンを器用に操作しながら松坂が言った。
「あっ、これ…西田社長ですね。確か、亡くなる数日前に作成されてましたよ。」
「これがね、計上金額が違う気がするのよ。しかも、当初の見積り額より大幅に。普通、交渉後の修正ってないよね?」
「あぁ~これですね。何か、間際になって変更されてるっぽいですね。えっと…あっ、これ岸辺物産ですよね。あそこの社長、結構色々あるんですよね…」
「色々?いつもこんな感じなの?」
「詳しくは分からないんですけど、社長がよくこぼしてましたね。やり方もかなり汚いみたいな。まぁ、相手方は手広くやってて顔も効くから、暗黙の了解って言ったらあれですけどね…うちみたいな小さい会社、睨まれたらひとたまりもないですから…」
松坂が辺りをキョロキョロしながらミユキに耳打ちした。
「ここだけの話、社長、何か岸辺さんに弱み握られてる~って、そんな噂もチラホラ…」
「そう…ありがとう。ごめんね、仕事の手を止めて。」
岸辺物産…そもそも、業界大手の会社がうちみたいな小さい会社に一体どうゆう伝で…
金額の違和感、西田の弱み…
様々な違和感を感じながらも、ミユキはまだ真実を知らずにいた。
脚本家カザハナ
※友情出演…松坂桃李