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妄想劇場 29話

29話

「長い眠り」

盗聴を仕掛けた部屋からは
岸辺と竹内の会話が聞こえてきた。

岸辺「何やら嗅ぎ回ってる犬がいると聞こえてきたんだが」
竹内「大丈夫ですよ。上の奴らには手を回してありますんで」

岸辺「うん、ならいいが」

竹内「おやじ……あ、会長。
下のもんも増えてきたんで少し報酬に少し色つけて欲しいんですがね」

岸辺「わかってる」

その後はあまり会話もせずに
1時間ほどで岸辺と竹内は店を後にした。
「嗅ぎ回ってる犬って誰の事かしら?」とミユキと藤堂は考え込んだ。藤堂とは別れミユキはジョーの病院へ向かった。個室を開けるとジョーはベッドで眠ったままだ。
あの日からずっと。
「ジョー…私だよ。寝過ぎじゃない?早く起きなよ、私の傍にいるって約束したばかりでしょう?」手を強く握り
ジョーの体に顔を預けた。
「まだわからない事ばかりだわ
あなたがいないと不安で不安で仕方ないの」と涙が頬をつたう。その時ジョーの指がピクっと動いたような気がした。 

「⁉︎ジョー?」何回も呼びかけると、 また指が動いた。ナースコールを押し
「せ、先生!先生をお願いします!」泣きながらミユキは言った。
バタバタと医師や看護師が来てジョーの症状を確認していた。医師は振り返り
ミユキを見ると「良かったですね、意識が戻ったようです」と答えた。ミユキはジョーに駆け寄り「ジョー!ジョー!わかる⁈私よ!」と声をかけた。
ジョーは目をうっすらとだけ開けて
「声でけーよ」と笑った。

脚本家 ミユキ

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