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妄想劇場 37話

第37話「償い」
「そんな話…信じない…わ…そんな…」
松重を睨み付けミユキは続けた。
「本当のママは?その時、車に同乗してなかったんでしょう?だけど…だけど…2人で心中したって…そんな風にニュースになったって…」
「それは、竹内が上手く仕込んだんだ。君の本当のママ、美代子さんを…予め睡眠薬で眠らせておいて…無理心中を装ったんだ…
豊は、全く何も知らなかったんだ。本当だ!!」
奥田がテーブルを激しく叩いた。
「ミユキ…こんな事をしても…決して許される訳じゃ…
訳じゃない事も…分かってる…
分かってる…だけど…だけど……」
松重は胸元のポケットから出したナイフで、自分の首を切り裂いた。
…!…………!!……
「豊ーーーっっ!!」
奥田が松重に駆け寄った。
吹き出す血を押さえても、次から次へと溢れて止まらない。
その様子を、ミユキはただ呆然と見つめるしか出来なかった。
「豊ーーーっっ!!しっかりしろーーーっ!!
豊ーーーっっ!!豊ーーーっっ!……」
目の前の光景が、まるで他人事みたいに見えた。
えっ……パパ……?……
パパが……パパ…が……??…
ハッと我に返り、ミユキが松重に近寄った。
「パパー!パパーー!!
パパーーーーっっ!!
あぁ……あぁ…パ…パ……」
ミユキは持っていたストールを取り出し、松重の首元にあてがった。
「ダメー!ダメーー!!
死なないでーーーっっ!!パパーーーーっっ!!
あたしに、あたしに悪いと思うなら…
絶対にダメだからーーーっっ!!
そんなの絶対に…絶対に許さないからーーー!!!

奥田が呼んだ救急が到着した。
「グフッ…グッ…ウッ…グッッ…」
松重の口から血が溢れて流れ出た。
ミユキを見つめ笑顔を見せた。
「あ…ぁぁ…キ……ミ…ミ…ぃぃ……」
最後の力を振り絞り、手を差し出した。
ミユキはその手をしっかり握りしめた。
「…ユキ……あぁ…ぁ…あい…あ…あ…あぃ………て……る……」
ミユキ…ミユキ…
愛してる……
俺の大事な娘……愛しい娘…
可愛い俺の…娘…ミユキ……
ミユキ………
ミユキの腕の中で、松重は息絶えた。
脚本家カザハナ

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