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おひとり様
1人で高級寿司に行ってきた
高級と言ってもいろいろあるだろうが、私にとっては1万円越えたお寿司は高級だ。
予約をし、予約時間ジャストに入店。
夕飯にしては早めの時間に予約したのでお店には1人。
オドオドしていたから直ぐに私がこういうところに初めて来たとわかっただろう。
こういう時、妙に偉そうにするのとか知ったかぶりする方がのちのち何年も引きずるくらい恥ずかしくなるので私は隠さない事にしている。
「こういうところに1人で来たの初めてなんです」照れ。(50ちゃいの照れってどうよ)
大将と恐らく呼ばれるようなカウンター越しの職人さんが笑顔で「大丈夫です。ここはふらっと初めての方もこられます」と仰って下さり安心する。女将さんであろう方も、ものすぐく優しい笑顔。
「お飲み物どうされますか?」と聞かれ、メニューを見るとお酒の数々。そうだ、私は飲めないのだ。
とてつもなく申し訳ない気持ちとここに来た選択が間違ったと後悔。酒を飲めないなんてお店の利益にならない客じゃねーか!頭の中で頭を抱えてコダックになる。
ソフトドリンクのページから「暖かい烏龍茶ありますか?」と消えそうな声を絞り出す。多分この時の私の目つきは子犬がおやつを懇願するような可愛いものであって欲しい。(現実は50の女性がしているので当社比500パーセント可愛さ上乗せ)
女将さんの優しい柔らかい「大丈夫ですよ」に安心する。
私もう大丈夫って言葉や雰囲気どれだけ貰ってるんだろ。不安が過ぎるな。
飲み物が来て直ぐにお料理が始まるのかなと思ったらなんだか大将もあまりせかせかしていない。
き、気まずい
こんな時とりあえず適当に話を出来るのは私の特徴ではあるけれど、誰も客の居ない店内に新規の客VS高級寿司店員2人という状況にどんな事を話せばいいのかぐるぐる。
とりあえず店内を見渡し、「こちらのお店は営業して長いんですか?」
という安っぽい民放のグルメレポーターみたいな話をする。でも店内どう見ても綺麗過ぎて歴史があるようには見えないのにだ。お前、今店内見渡したよな…
そこから私の地元の話になり、私が緩んだところを見たのか、その辺からお料理が出始める。
あとから入ってくるお客さんは常連さんが多い。1人でぽつんと食べてるのは私だけだ。でも大将は私に合わせてお料理をどんどん出してくれる。寂しくなることは無かった。他の客の料理より私を優先してるのが分かる。この優しさに溺れたい…
美味しいお料理と静かに味わえる幸せで気持ちがよくなった私は思い切って女将さんに「梅酒が飲みたいのですが、お酒強く無くて…」
なんて言ってわがままな客になる。
普通より半分のアルコールで割った梅酒のお湯割りにほっこりしながら最後まで堪能。
大将に「美味しかったです。ご馳走様でした」と話すと慌てて女将さんが来て「ごめんなさい!お茶お出しするの忘れてしまって」ちょっと前に出たカニのお味噌汁と梅酒お湯割りでちゃぷちゃぷになったのにさらにお茶を流し込む。
でもこのお茶も上手い。こんな美味しいならいくらお腹がちゃぽんちゃぽんと音を立ててもいい。
お会計はレジに行くんだと思い立ち上がると、「あ、お客様ここでお会計します」と言われ今日最大の恥ずかしい状況を自ら作り出し、最後店を後にした。ある意味私はエンターテイナーかもしれん。そこで踊れば良かった。
女将さんの優しさに裏方の素晴らしさを感じ、大将の愛を感じ。とてつもなく暖かいほっぺに人から酔ってると思われてももうどうでもいいやと思うくらいふわふわした気持ちでホームでワタリドリの音を聞いてまた来れることを願った。
という初めての高級寿司に行った話。