財政調整基金はいくらが適切?
昨日は、「今年度はいろいろあったけど町の貯金=財政調整基金はプラスで終えられそう」というお話をしました。
おそらく、今年度終了時点での残高は27億円ちょっと、くらいになると思います。(決算は実際には9月議会で審議していただきますので、あくまで見通しです)
ですが、個人の家計とは比較しにくい金額なので、「果たして財政調整基金っていくらが妥当なの?」と思う方も多いはずです。
実は、法律などで「これくらいにせよ」と書いてあるわけではありません。個人の貯金はいくら貯めるべきという法律がないのと同じです。また、自治体によりそれぞれ事情が異なりますから、現実に貯められる額もバラバラです。
ただ、以前「老後には2000万円不足するから2000万円は貯めておくべし」という話が大きな話題になりましたが、同様に、「自治体の貯金」にも相場観のようなものはあるようです。
平成29年、総務省自治財政局がまとめた「基金の積立状況等に関する調査結果」において、都道府県と市町村がどのような考え方に基づいて積み立てしているのかが分かります。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000517449.pdf
(このPDFのp.12=PDFリーダー上ではp.13、をご覧ください)
市町村に絞ってみると、圧倒的大多数が「標準財政規模」の5~10%か、10~20%をめどに積み立てていることが分かります。
標準財政規模とは、自治体が普通にやっている時の一年のだいたいの収入額のことで、
標準税収入額+普通交付税+臨時財政対策債発行可能額
の三つを合わせたものです。最後の臨財債は普通交付税が不足する代わりに発行しているものなので、概念的には普通交付税の一部と考えられます。つまり、自治体が直接得ている税収と、国からの交付税の合計ということになります。
ですので、全国の市町村の相場観では、
標準財政規模の20%貯めておけばまず安心
ということになるのだと思います。
さて、御代田町では標準財政規模はどれくらいの金額になるのかと言いますと、令和2年度分で
42億2808万円
です。ということは、その20%は8億4560万円ですので、御代田町の27億円は余裕でクリアできていると言えます。
一方、私が尊敬してやまない都竹淳也(つづく・じゅんや)市長が采配をふるう岐阜県飛騨市のHPを見ると、別の視点での適正規模の考え方が記されています。
https://www.city.hida.gifu.jp/soshiki/4/6818.html
簡単に言うと、大規模災害が起き、市民全員が被災した場合、被災者一人当たり40万~50万円の支援費用が必要であり、国や募金による義援金を考慮してもその半分を確保しておくべきだということで、1人当たり25万円に飛騨市の人口をかけるとおよそ60億円になる、ということなのだそうです。飛騨市の令和元年度末財政調整基金残高は64億8600万円ほどなので、その基準もクリアできており、一方で、その近辺なので貯め込みすぎでもない、という理屈になるのだと思います。
さて、それでは御代田町ではどうか。3月1日現在の御代田町の人口は15,853人です。これに25万円をかけると、39億6300万円余となります。
したがって、御代田町としては、標準財政規模基準の8億4560万円から、39億6300万円の間が妥当という結論でいいのではないかと思います。かなり幅は広いですが、この幅を下回ると危険信号、この金額を上回ると貯め込みすぎ、もっと仕事をいろいろやりましょう、となると思います。
なお、コロナ禍の状況が始まった頃、副町長と何となく取り決めてあったのが、「コロナ対策で予算を使ったとして、いくらまでなら財政調整基金を減らしてもいいか」で、ズバリ20億円、と考えていました。およそ7億円は取り崩して構わない、ということです。実際には国の臨時交付金、県補助金などもありそこまでいきませんでした(というか黒字になってしまいました…)。また、このコロナ禍が一番の「災害」とも限りません。今後も基金を大きく取り崩すことはないに越したことはありませんが、覚悟だけはしておきたいものだと思います。