しかた ない

ここ数日、壁の中から　キャキャキャ　というナニガシカの鳴き声が聞こえてくる。
なんだろう、ネズミくらいの大きさの生き物ではないかとおもうけれども、なにせ壁の中なので、正体はわからない。

特に決まった時間ということはなく、思い出したようにキャキャキャと鳴き声がする。

１週間くらいか、
昨日、その鳴き声がずいぶん小さく、キャキャキャでなく、キャ、と
回数も少なくなっていることに気がついた。

野生の動物が鳴く、っていうのはそれなりのエネルギーを消費するので
ごきげん！　で鳴くのではないとわかっていたけれども
なにせ響きが軽快で楽しそうだったから、うっかりしていた。

声が、どんどん小さく
鳴く回数も減っている。

縁もゆかりもない。

ないのに、胃が絞られるし、喉がつまるし、鼻のおくがヒリヒリする。

しかたない、しかたない、と
教えられた呪文を唱えるけれども、
なかなか呪文は効かない。

いや、効いているのかもしれないけれど
ちょっと効力が小さい。

あーあ、しかたない。

しかたない、の

ない　という部分は明るく言う、声に出す

というのが、呪文の秘訣らしい。

しかた ない。