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ボストンから見える、日本のホームレス支援の現在地。_ボストン福祉レポ Part.4

インフレと円安のリアル

・ペットボトルの水500ml:2.49ドル(360円)
・スタバ―のコーヒー:4ドル(520円)
・セブンイレブンのサンドイッチ:5.79ドル(780円)
・デカめのハンバーガー:17ドル(2300円)
・トラックドライバーの時給:40ドル(5200円)
・障害者年金:月1000ドル(13万円)
・ボストン大学の1年分の学費:7万ドル(1000万円)
・シェルター利用料:0ドル

インフレと円安でバカみたいな物価になっています。朝ごはんにコーヒーとサンドイッチを外で食べるだけで軽く1500円近くかかる感じです。

これで1500円ほど

ボストンで留学中の友人や先輩とも会いましたが、円で振りこまれる手当で暮らすのはさすがにしんどい様子。食事中も「あのスーパーは野菜が安い!」と盛り上がってました。
 
逆の立場からみれば、日本はそれだけ安い国。学生時代にインドに行ったとき「モノもサービスもこんなに安いのか!やりたい放題だ!」と興奮した記憶がありますが、同じ感情を日本に来た旅行者が味わっていると思うと、なんだか切なさがあります。

スーパーマーケット

シェルターでの支援のリアル

4日目、初日にアポをとったボストン最大規模のシェルター Pine Street Inn へ。

Pine Street Inn入口

マサチューセッツ州のシェルターで長年働いてきたという所長のジョッシュさんが迎えてくれ、手荷物検査を通って中へ。

入ってすぐのところには手荷物検査ゲート

10時~16時はベッドの清掃時間だそうで、居住スペースは空っぽ。この時間は入居者=ゲストは外出したり、1階の共用スペースでのんびりしていました。
 
つまり、一人ひとりに固定のベッドがあるわけではなく、毎日ベッドを申請し、渡された番号のベッドで過ごし、朝には荷物をまとめベッドを空ける、という仕組み。この辺りが、日本のホームレス支援施設との大きな差でしょうか。

平均滞在期間は1~2カ月ですが、複数のシェルターを渡り歩く中で1日だけ利用する人もいれば、10年間ずっとここで暮らしている人もいるとのこと。
 
そんな男性用シェルターの定員は250人で、夜間の職員配置は12人。
しかも驚いたのが、コロナ前の定員は500人で、写真のベッドが全て2段ベッドという恐ろしい人口密度だったそうで…。

コロナ前は、これが全て2段ベッドだったそう…

ここに来ると「2人部屋か個室か」みたいな議論をしている日本のホームレス支援が少し呑気に思えてしまいます。こんな人数なので、スタッフとゲストの距離感は常に保つようにしているとも言っていました。

社会のリソースと支援の価値観

一方で、無料Wifiは全館完備、ドクターや依存症治療の専門家も複数人雇用。他にも、専用車両による24時間の見回り outreach やアパート確保に向けた支援 Housing support も、総勢125人のスタッフ体制で提供しているそう。

市内を巡回するための車両

必要なものは徹底的に用意したうえで、シンプルかつ大規模にアプローチするやり方はアメリカらしいです。
 
キッチンを挟んだ反対側には女性のシェルターがあり、中央のキッチンでは、市内に数多ある小規模シェルターやグループホーム、アパートへの配食用に毎日3000食(!)を作っているとのことでした。

中央キッチン

ちなみにこの建物は100年前に消防署として建てられたそうで、煙突のようなものは、ネットも電話もない当時、目視で火の手を確認するための展望台として使われていたそうです。

最後に「こんな人口密度で喧嘩とか起きないんですか?」と恐る恐る聞いてみると「そんなの日常茶飯事だ!すぐに仲裁して、場合によってはポリスを呼ぶことだってある」と笑っていました。ここのスタッフには、さすがに頭が下がります。笑
 
日々の支援にどんな価値を見出すのかは、社会の価値観やリソースによって変わるものだと痛感します。だからこそ、日々言語化し更新する必要があります。


所長のジョッシュさんと

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