59 ダサかっこいい
先日前の職場でお世話になった先輩が農家になって初めての苗植えだから手伝って欲しいと依頼があった。誘ってもらえて本当に嬉しかった。年上が苦手だった私の意識を変えるきっかけをくれた人であり、コミュニケーションの大切さを教えてくれた人であるからだ。そんな先輩の頼みなら喜んでと思って二つ返事で引き受けた。依頼の電話があった際に他に来るメンバーの名前も聞かしてもらった。
その中の1人にかつて好きだった女性の名前があった。私はその女性に自分の思いを伝えたことがある。説明をすると少しややこしいのだが、ここを省いてしまうと伝えてたい事が伝えきれないので書かしてもらいたい。思いを伝えた日は卒業式後の打ち上げだ。それも面と向かってではなくLINEで。情けないと思われてるかもしれないが、これには私なりの理由がある。私は彼女のことが1年以上好きだった。でも思いを告げ、振られて気まずい関係になるのは嫌だった。クラスメイトが15人くらいしかおらず、距離を置こうとしても嫌でも関わりあることになるから。そんな言い訳をダラダラ書いているが、様は自信がなかった。というよりも100%振られるなと思っていた。仲は良かった自信はあるが、あくまで友人同士の仲の良さであったから。
思いを告げれないまま過ごしていたある日。仲の良い友人が、私にこう言ってきたのだ。
あいつ彼氏ができたらしいよと。
その時の私は平然とへーそーなんだ。とあたかも興味がなさそうに適当な返事をしたが、本当はえ!まじで!と問いただしたくなるのをグッと抑えたのを覚えている。その時の演技は本当にうまかったと思う。アカデミー俳優も参考にするくらいの。心のうちは動揺はしたが後悔はなかった。これは強がりではなく本当にそうである。
でもどうしても私の思いだけは伝えたかった。心の底から好きだというこの思いを。でも気まずい関係にはなりたくなかった。だから卒業式の日を選んだ。
彼氏がいる女性に想いを告げる。別に奪い取ってやろうなんて微塵も思っていない。私の心の決着をつけたかった。一年以上思い続けたのだから。彼女にしてみれば迷惑な話だったと思う。本当に申し訳ない。
想いの告げかたは、解散後にLINEを送った。恥ずかしいのでどの様な文章を送ったのかは割愛させてもらうが。その後どうしてもやっぱり言葉で想いを告げたくなった私は携帯をとり、電話をかけた。そして電話口で
好きだったんだ。気づいてた?と彼女に問う。
返答は気づいていなかった。と答えてくれた。
もしかしたら気づいてたかもしれないが彼女なりの優しさだったのかもしれない。
その時はその後の言葉なんて考えていなかったから、なら俺の勝ちだねとよく分からない言葉を彼女に投げかけ、勝ちってなんですか?と笑いながら答えられる。たしかに何が勝ちなんだろうね。と答えたのちに
本当に幸せになって欲しいという思いしかないからと伝えありがとうと返され
じゃあまたねと言って電話を切った。
当時も思ったが、今書きながらも思った。カッコつけすぎだろと笑。本当はなんとも言えない感情のくせに。授業中や、レクレーション中も彼女のことばっか目線で追いかけてたくせに。カッコつけやがって、本当にダサいな。笑。
その後2年ぐらい前に仕事関係上1ヶ月くらい同じ職場で働いたりと交流があったのだが、その時は別に告白したことがなかったかの様にいつも通り接してもらった。彼女の懐の大きさには感謝している。
そして2年ぶりに彼女と会うことになったのだ。それが少し楽しみであったのだが、彼女はその時から付き合っている彼氏と一緒にきた。それが計算外であった。その彼氏はイケメンで、優しそうだった。そして2人で楽しそうに作業する光景を見て少し胸がちくりとした。自分が思い描いてた様な幸せがそこにはあったからだ。でも少しのチクリで済んだ。その事実が少し嬉しかった。もしかしたら久しぶりに会って未練タラタラな自分が出てきて、マイナスな事を思うかと考えたが、そんなことはなかった。微笑ましい光景を見て、幸せそうで本当に良かったなとそう思えた。
これからも末永く幸せであってほしい。そしてまたいつか会えたらと思っている。そう思えたのは当時ダサいながらも想いを告げた自分がいたからだと思う。もちろん彼女の懐の広さも。
おい!当時のダサいカッコつけ方をした自分!お前は5年後も変わらずダサいぞ。でもね。俺は嫌いじゃないダサさだよ。笑。いいじゃんダサくて。いい生き方してるよ。その彼氏には性格も顔も負けてるかもしれないけど。上手く行かない人生を、思い通りに進まない人生を歩んでるけど。ダサくてカッコいい。いつか決めたそんな人間になりたいと思ってる方向には進んでるよ。それが正解かどうかなんて今の俺にはわからないけどね。笑。
締め方もまたダサいな。笑。まぁいいか。そんな自分で。